新型コロナウイルス影響下での、2020年4月入社者に対する 新入社員教育等の状況調査

人事

新型コロナウイルス影響下での、2020年4月入社者に対する新入社員教育等の状況調査
掲載している雑誌:企業と人材

新入社員の導入研修で「習得してもらう内容・要素をやむを得ず減らした」とする企業が6割

人事労務分野の情報機関である産労総合研究所(代表・平盛之)は、このたび、「2019年度 大学・大学院卒新入社員教育の実態調査」の追加調査として、標記の調査を実施しました。

この追加調査(二次調査)は、2020年1~3月に当社が実施した「2019年度 大学・大学院卒新入社員教育の実態調査」(一次調査・上場企業等から任意に抽出した約3,000社を対象とする郵送調査)の回答企業にメールで依頼し、ウェブ上で回答を求める形式で行った。一次調査の詳細については、本プレスリリースと同日付でプレスリリースを発表しているので、そちらを参照されたい。本リリースは、追加調査の集計結果をまとめたもので、主なポイントは以下のとおり。

 

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新型コロナウイルス影響下での、2020年4月入社者に対する新入社員教育等の状況調査
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調査結果のポイント

(1)入社式の実施状況および実施時期

  • 2020年4月入社の新入社員に対する入社式の実施状況をたずねると、全体としては「入社式は当初の予定どおりの日時で、全員集合して実施」の割合が過半数。ただし、3,000人以上企業では「やむを得ず中止」が3割強で最多。

(2)新入社員に対する導入研修の実施状況

  • 通常は入社式直後から行われる「導入研修」は、「当初予定の日程で実施」が7割、「開始日を遅らせて実施」が2割。

(3)導入研修の開始時期および実施形態の変更

  • 導入研修の開始時期は、「4月中に開始」が8割以上。実施形態は、全体では「変更なし」が過半数だが、3,000人以上では、「全部/一部を主としてICT活用の形態に変更」が4割。

(4)導入研修のプログラム内容の変更

  • 導入研修では、6割近くが「習得してもらう内容・要素をやむを得ず減らした」と回答。3,000人以上企業では9割近くに。

(5)2020年4月入社者に対する新入社員教育全体の実施方針

  • 「導入研修、現場実習等の期間を調整・短縮して実施し、配属日は変更しない」が5割強で、配属日重視の傾向。

(6)研修中止等の場合の教育会社・外部講師への支払いに対する考え方

  • 「極力、延期という形で対処し、実施後に支払いができるようにする」が39.6%で最多。次いで「中止となってもキャンセル料は発生しない」24.0%

 

調査要領

当社が2020年1月末~3月上旬に実施した「2019 年度 大卒・大学院卒新入社員教育の実態調査」の回答企業361社のうち、メールアドレス等を把握できた333社を対象に、ウェブ上で回答する形式の追加調査として実施。調査時期は2020年3月25日~5月15日で、96社から回答を得た。

 

調査結果の概要

(1)入社式の実施状況および実施時期

[1]入社式の実施状況

2020年4月入社の新入社員に対する入社式の実施状況をたずねると、全体としては「入社式は当初の予定どおりの日時で、全員集合して実施」の割合が最も高く、56.3%であった。次いで「入社式はやむを得ず中止する」の21.9%。ただし企業規模別にみると、3,000人以上では「やむを得ず中止」が34.8%と最も高く、次いで「日時は概ね当初の予定どおりだが、新人をいくつかのグループに分け、分散させて実施」と「日時を延期したうえで、全員集合して実施」がともに21.7%となっている(図表1)。

[2]入社式の実施時期

続いて、入社式の実施時期については、「4月1~5日のいずれかに実施」が70.8%と高い。ここでも、3,000人以上だけが他の区分と異なる様相で、同項目は4割にとどまっている(図表2)。

図表1 入社式の実施状況について

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図表2 入社式の実施時期について

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(2)新入社員に対する導入研修の実施状況

本社人事・人材開発部門が主管し、通常は入社式直後から行われる「導入研修」の実施状況については、「当初予定の日程で実施」が70.8%で最も高く、「開始日を遅らせて実施」19.8%、「人事主管の導入研修は行わず、配属先の部門で教育」9.4%という結果であった。規模が大きくなるほど「開始日を遅らせて実施」の割合が高くなっている(図表3)。

新入社員に対する導入研修の実施状況について

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図表3 新入社員に対する導入研修の実施状況について

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(3)導入研修の開始時期および実施形態の変更

[1]新入社員教育の実施状況

導入研修の開始時期は、「4月中に開始」が84.4%で、大多数の企業が4月中には研修をスタートさせている。3,000人以上の企業では、「6~7月中に開始」が2割を超える(図表4)。

[2]導入研修の実施形態の変更

導入研修の実施形態については、全体では「変更なし」が54.2%と最も高いが、規模別ではかなりばらつきが生じた。3,000人以上では、「全部/一部を主としてICT活用の形態に変更」が、「変更なし」を上回っている(図表5)。

図表4 導入研修の開始時期について

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図表5 導入研修の実施形態の変更について

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(4)導入研修のプログラム内容の変更

導入研修のプログラム内容については、6割近くが「習得してもらう内容・要素をやむを得ず減らした」としている。「内容・要素は変更なし」は3割にとどまった。大企業ではこの傾向が顕著で、3,000人以上では「減らした」が9割近くに達している。業種別では、製造業で「減らした」が多い(図表6)。
学校教育の遅れに関しては、文部科学省が複数年かけて取り戻す方針を打ち出している。企業内の人材育成をこれと同列に論じることはできないが、前例のない事態だけに、人事・人材開発部門では新入社員の配属後の状況をみながら、フォロー教育の充実、自己学習支援などの対応を検討することになると思われる。

導入研修のプログラム内容の変更について

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図表6 導入研修のプログラム内容の変更について

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(5)2020年4月入社者に対する新入社員教育全体の実施方針

調査では、2020 年4 月入社者に対する新入社員教育全体の実施方針についても聞いている。最も割合が高かったのは、「導入研修、現場実習等の期間を調整・短縮して実施し、配属日は変更しない」55.2%で、配属日を重視する企業が多いことがわかる。3,000人以上、1,000~2,999人では、いずれも65%以上となった。「全プログラムを当初の予定どおり実施」する企業は、全体では32.3%。299人以下では過半数となっている(図表7)。

2020年4月入社者に対する新入社員教育全体の実施方針

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図表7 2020年4月入社者に対する新入社員教育全体の実施方針

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(6)研修中止等の場合の教育会社・外部講師への支払いに対する考え方

人材育成分野では、個人事業主の研修講師やごく小規模の教育会社も少なくない。ほとんどの外部研修が中止となった3月以降の状況は、飲食業と同等の厳しさではないかと懸念される。調査では、研修中止等の場合の教育会社・外部講師への支払いに対する考え方についても聞いてみた。そうすると、「極力、延期という形で対処し、実施後に支払いができるようにする」が最も高く39.6%。次いで「中止となってもキャンセル料は発生しない」24.0%、「キャンセル料として全額ないし一定額を支払う」22.9%という結果であった(図表8)。

研修中止等の場合の教育会社・外部講師への支払いに対する考え方

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図表8 研修中止等の場合の教育会社・外部講師への支払いに対する考え方

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(7)新入社員に対して行っている施策や、今後の課題となりそうなこと(自由記述)

※本設問では、任意でコメントを記入してもらう形式で回答を求めた。以下は、その全コメントを業種別、企業規模別に並べ替えたもので、企業現場の実像をうかがい知るための参考としてご紹介したい。なお、コメントには4/7の緊急事態宣言発令前のものもあり、刻々事態が変化していくなかでの回答であることにご留意いただきたい。

製造業
  • 導入研修の会場分散および研修期間の短縮を実施予定。(3,000人以上)
  • 導入研修は、知識付与だけではなく、同期のつながりを築く目的もあるので、全員が一堂に会する集合型の研修ができず、不満がある(今回のケースは仕方ないが)。(3,000人以上)
  • 集合研修を分散教室形式で実施。合宿、社会奉仕活動など、外部機関と接触するカリキュラムは中止。別カリキュラムへと差し替え、日程は例年と変わらず実施。(3,000人以上)
  • 新入社員同士の横のつながり、コミュニケーションの不足をどうカバーするのか。(3,000人以上)
  • 入社式、新入社員研修のいずれもオンラインで実施、対象人数は50名。新人は自宅から参加。主催・講師も自宅からリアルタイム、または一部録画等にて講義配信および議論を実施中。全国拠点への配属を当初予定より遅らせたため研修期間を延長して実施中だが、新人主体で研修企画させるなど新たな取り組みが功を奏し、研修内容としては例年以上の質・内容で運営できている。オンラインでの人間関係構築は苦労もあるが、一人ひとりへの対峙と同期コミュニティの形成機会を意図的につくることで概ね解消できた。(3,000人以上)
  • 各事業部門ごとに新人研修実施となるため、本社の人材開発部門のスタッフが出張教育を行い、なるべく全社で統一した研修を実施する予定。大卒については本社採用のため本社で実施するが、高卒等の現場社員約110名が本社を知らず、各事業部門の同期も知らないことにより、帰属意識や愛社精神等をどう育成していくかが今後の課題。終息後に、本社で数日教育実施するかも検討中。(1,000~2,999人)
  • 教育実施場所に対する環境整備(スペース拡張、換気、体調管理、咳エチケットの徹底等)。(1,000~2,999人)
  • 研修内容を圧縮し、技術職能社員については各支店で実施。総合職能社員については本社で実施するが、6カ月研修を約2週間に短縮し、配属日を大幅に早める。各支店での研修は一部WEB研修とする。(1,000~2,999人)
  • 新幹線等、公共機関による長時間の往復移動を伴う開催場所への見学や研修を自粛。(1,000~2,999人)
  • 新入社員全員が集合する研修は初日から行うが、短縮して早めに修了し、配属を早める(他の設問の選択肢に、後ろ倒しはあったが前倒しはなかったので……)。また、研修を小集団に分割した形で分散開催を実施する。
     今後の課題として、期間およびプログラムが縮小された関係で、例年築かれていた同期感の醸成や組織の適応、学生から社会人への切り替えが不十分である可能性がある。研修担当側も、新入社員の一人ひとりの特性を十分に把握しきれず、今後のフォローの質が低下する恐れがある。(1,000~2,999人)

  • 当社は、導入研修の開始日は予定通りだが日程全体を短縮化し、配属日を前倒しする方針(後ろ倒しはなし)。また、導入研修で実施しきれなかった内容をフォローする予定(コロナが落ち着いてから改めてフォローアップ研修として集合予定)。(1,000~2,999人)
  • 日々の検温を指示、卒業旅行での海外渡航の有無を確認、事業所間移動の低減等。(1,000~2,999人)
  • 例年と異なり、特にコミュニケーション面の教育が不足していることによる、配属後の対応。(1,000~2,999人)
  • 導入研修の日程は、開始日は変更せず修了日を前倒しにする短縮日程で実施した。(1,000~2,999人)
  • 県をまたぐ拠点間の移動は望ましくないため、導入研修でのOJTに支障が生じている。そのため新入社員の自社理解や今後の配属に対しての影響を懸念している。(300~999人)
  • 現場配属後のフォロー研修等への影響(出張自粛措置がいつまで延長されるか)。(300~999人)
  • 懇親会は中止。外出する研修は一部内容を変更して実施。(300~999人)
  • 事業所内で感染者が発生して閉鎖となった際の新入社員への対応。(300~999人)
  • 採用人数も多くなく、各工場ごと分散して入社式を実施することにしたため、特に問題はない。研修・会議等で人数が多くならないようにしている。(299人以下)
非製造業
  • 宿泊集合研修の中でルールを守る・お互いを尊重しながら物事を進めていく・多様性を受入れる、整理整頓などの所作も含めた躾を実施している。この点を入社直後に実施することができない点に不安を感じる(新入社員本人が知らないことによる不利益な扱いを受けないのか、が気になる)。既に現場での勤務を経験後に実施する「躾」などは本人たちにとって実りあるものにする必要がある。
    状況が致し方ないとはいえ、新入社員が社会人、企業人としてのスタートをつまずいた、と感じることはないか。きちんと教育をしてもらっていない、と感じるのではないかと案じている。自己肯定感を高めることも必要であると感じる。
    来年度以降は「集合研修で本当にすべき内容」を精査していく。今年度の成長度合いを観察しながら、例年どおりの運営・内容の見直しを早急に見直しする必要がある。(3,000人以上)
  • 緊急事態宣言が発動された北海道への配属開始日を4月上旬→下旬に変更(3,000人以上)
  • 入社式の分散かつ時間の短縮、導入研修の短縮、配属日を早める、配属後にウェブ研修を実施。(3,000人以上)
  • 4月一杯は在宅業務とした。オンライン研修・教育システムを使用し、Off-JTをメインで実施していく。(3,000人以上)
  • 問5(本社人事・人材開発部門主管の導入研修について)は当てはまる選択肢がありませんでした。正しくは「人数・回数を見直し、おおむね同時期に導入研修を実施」です。(3,000人以上)
  • 入社式や導入研修を実施しない場合、新入社員の入社に対する不安を払拭できるのか。人事・教育部門として、導入研修を短縮した場合に新入社員の意識・意欲が維持できるのか。研修会場への移動や研修時の感染予防策の徹底。(1,000~2,999人)
  • TV会議システムを利用した集合研修を検討中。(1,000~2,999人)
  • 同期の横のつながり欠如が心配なので、コロナが一段落した段階でチームビルディングも兼ねて1日の研修を行う予定。(1,000~2,999人)
  • 広い会場で、換気、休憩を十分にとる。(300~999人)
  • 集合研修についてもマスクなどを配布し、感染拡大防止に努める。(300~999人)
  • 例年のフォローアップ研修を見直し、導入研修見送りの内容を補う。(300~999人)
  • 換気、部屋の大きさ、消毒など、感染予防を徹底して研修を行ったが、現地域での緊急事態宣言後は、テレワークに切り替えた。テレワークは、課題を与え自宅学習に終始するのではなく、社から配信講義を行い、環境がテレワークに変わっても、予定していた学びを継続できるよう対応した。(300~999人)
  • 状況によって、オンライン化を検討。(300~999人)
  • 外部研修をeラーニングにするか検討中。(299人以下)
  • 外部講習について開催時期が未定となっているため、再開を待つのか別のもので埋め合わせをするのかが検討課題となっている。(299人以下)
  • 内製された新卒研修なので外部影響を受けることは少なそう。心配どころは、21新卒向けの採用かもしれない。(299人以下)
  • 新入社員に関してはリモートにて通常通りのカリキュラムを実施中。その中では、長時間の自宅での業務にストレスを抱える者が多いが、なかなか出社対応等もさせにくいので対応を考えている。(299人以下)

 

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本リリースに関する取材などのお問い合わせ

株式会社産労総合研究所「企業と人材」編集部 担当:石田
TEL 03(5860)9795  MAIL edt-e@sanro.co.jp

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