新入社員教育は短期育成型が約7割
一方、導入教育の実施日数は長期化の傾向
人事労務分野の情報機関である産労総合研究所(代表・平盛之)は、このたび「2019年度 大学・大学院卒新入社員教育の実態調査」を実施しました。前回調査は2014年度で、4~5年おきに調査を実施しています。
調査の結果、新入社員教育に対する考え方としては、「できるだけ短期育成・早期に現場へ」が約7割を占める一方、導入教育の実施日数は平均29.3日(前回調査20.4日)と、長期化の傾向がみられる。
また、新入社員指導員制度を導入している企業は66.3%で、制度に関する課題がある企業は84.1%となっている。
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調査結果のポイント
(1)大学・大学院卒新入社員の採用状況
- 2019年4月入社の大学・大学院卒新入社員の採用を行った企業は、95.6%。
- 採用あり企業のうち、外国籍社員を採用した企業は24.4%。
(2)新入社員教育に対する考え方
- 新入社員教育に対する考え方は、人材開発部門による育成期間をできるだけ短期に設定し、早期に現場へ配属する「短期育成型」が70.4%、育成期間をより長期に設定する「長期育成型」が21.1%など。
(3)新入社員の育成期間
- 新入社員の育成期間は、「入社後1年間」が33.9%で最多。次いで「入社後1年未満」の28.5%で、あわせて約6割の企業が1年以内に設定している。
(4)新入社員教育の実施状況および実施期間
- 新入社員教育の実施状況をみると、「導入教育」(97.7%)が最多。次いで「OJT」(85.6%)など。
- 実施期間は、導入教育が平均29.3日間(前回20.4日間)となり、前回に比べて長期化の傾向がみられる。
(5)新入社員教育費用の平均額
- 新入社員1人当たりの教育費用の平均額は、入社前教育が53,548円、導入教育は209,736円。
- 教育費用の対前年度増減状況は、入社前教育・導入教育ともに「ほぼ同額」が高い。
(6)新入社員指導員制度の導入状況と制度に関する課題
- 新入社員指導員制度を「導入している」企業は66.3%。
- 新入社員指導員制度に関する課題が「ある」企業は84.1%。課題の内容は、「指導員の指導内容(質)にばらつきが出る」(79.7%)、「指導員に対する負担が大きい」(50.0%)など。
調査要領
【調査対象】上場企業および当社会員企業から任意に抽出した約3,000社
【調査時期】2020年1月末~3月上旬
【調査方法】郵送によるアンケート調査方式
【集計方法】締切日までに回答のあった361社で集計
調査結果の概要
(1)大学・大学院卒新入社員の採用状況
2019年4月入社の大学・大学院卒新入社員の採用を行った企業は、95.6%。従業員規模・産業別にみても、299人以下で80.9%となった以外は、全区分で9割を超えている。
また、採用あり企業のうち、外国籍社員を採用した企業は24.4%であった(図表1)。
図表1 2019年度 大学・大学院卒新入社員の採用の有無
(2)新入社員教育に対する考え方
新入社員教育に対する各社の基本的な考え方をみると、「長期育成型」(人材開発部門が直接かかわる育成期間をより長期に設定して、ある程度の業務遂行力を習得後に現場配属したい)は21.1%、「短期育成型」(人材開発部門が直接かかわる育成期間をできるだけ短期に設定して、早期に現場に配属してOJTで育成したい)は70.4%、「中間型」(いったん現場での業務を経験させ、業務イメージをもたせたうえで、人材開発部門が直接かかわって育成したい)は8.5%。全体の7割が「短期間で育成して早期に現場へ」としている(図表2)。
従業員規模・産業別にみても、おおむね同じ傾向がみられる。
図表2 新入社員教育に対する考え方
(3)新入社員の育成期間
人事制度または教育体系上の新入社員の育成期間(導入教育から現場実習、フォロー教育まで)は、「入社後1年間」(33.9%)が最多。次いで「入社後1年未満」(28.5%)となっており、全体の約6割が1年以内に設定している(図表3)。従業員規模・産業別にみても、おおむね同じ傾向がみられる。
図表3 新入社員の育成期間
(4)新入社員教育の実施状況および実施期間
[1]新入社員教育の実施状況
新入社員教育の実施状況をみると、「導入教育」(97.7%)が最多。次いで「OJT」(85.6%)、「フォロー教育」(85.3%)、「入社前(内定者)教育」(82.7%)、「現場実習」(77.2%)などと続く(図表4)。
[2]各プログラムの実施日数・期間
新入社員教育における各プログラムの実施期間をみると、入社前教育の期間は全体で平均56.7日間。これを(2)の「新入社員教育に対する考え方」別にみると、短期育成型、中間型がともに60日間を超えている。
導入教育は、全体で平均29.3日間(前回調査20.4日間)(図表5)。これを「新入社員教育に対する考え方」別にみると、長期育成型では平均44.2日間(同37.5日間)、短期育成型では平均25.1日間(同15.5日間)となっている。前述のように短期育成型の企業が約7割を占めるなか、導入教育については、前回に比べて長期化の傾向がみられる。
図表4 新入社員教育の実施状況(複数回答)
図表5 導入教育の実施日数・期間
(5)新入社員教育費用の平均額
[1]1人当たりの新入社員教育費用の平均額
新入社員1人当たりの教育費用の平均額をみると、入社前教育は53,548円(前回調査40,527円)、導入教育は209,736円(同185,772円)であった(図表6)。
これを従業員規模別にみると、入社前教育では299人以下で29,495円(同68,985円)と大幅に減少しているが、その他の規模では増加傾向にあり、3,000人以上は65,286円(同13,591円)と、5万円以上増加している。導入教育では、1,000人以上で減少する一方、その他の規模では増加傾向にあり、299人以下では162,238円(同67,556円)と、大幅に増加している。
[2]新入社員教育費用の対前年度の増減状況
新入社員1人当たりの教育費用について、対前年度での増減状況をみると、入社前教育については「ほぼ同額」(82.0%)、導入教育でも「ほぼ同額」(74.4%)が最も多い。また、「増加」は前回調査と比較して増えている(図表7)。
図表6 1人当たりの新入社員教育費用の平均額
図表7 新入社員教育費用の対前年度の増減状況
(6)新入社員指導員制度の導入状況と制度に関する課題
[1]新入社員指導員制度の導入状況
ここでいう「新入社員指導員制度」とは、職場に配属された新入社員を、会社が任命した先輩社員がマンツーマンで指導する制度をいう。これを「導入している」企業は66.3%(前回調査59.3%)、「導入していない」企業は27.5%(同35.8%)となっており、実施企業が増えてきていることがうかがわれる(図表8)。
図表8 新入社員指導員制度の導入状況
[2]新入社員指導員制度に関する課題
新入社員指導員に関する課題が「ある」と回答した企業は84.1%、「とくに課題はない」は15.9%であった。
課題ありとした企業に課題の内容をたずねると、「指導員の指導内容(質)にばらつきが出る」(79.7%)が最多。次いで「指導員に対する負担が大きい」(50.0%)、「上司や他の職場メンバーの育成へのかかわり方が薄い」(43.5%)などと続く(図表9)。
多くの企業が制度を導入しても、職場や指導員ごとに支援・指導内容にばらつきがみられ、配属直後の育成についてはまだまだ課題が大きいようである。今後も指導員自身への教育の実施や、上司・職場のメンバー対して制度への理解をより広めていく必要があると思われる。
図表9 新入社員指導員制度に関する課題の内容(新設項目)
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※ 詳細データは 「企業と人材」2020年5月号にて掲載しています。
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