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■楠田 丘・著
■四六判・298頁
■税込価格 2,530円
■ISBN 978-4-87913-962-7 C2034
■発行日 2006年7月
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目次
はじめに
はしがき
高齢化、国際化、構造変革など諸情勢の変革の中で、わが国の賃金は、その水準も個人間の格差構造も、そして、定昇など決定制度のあり方も、大きく変革を遂げつつある。賃金を決める要因としては、労働力の需給事情や生産性の高さや、生計費の変化など多様であるし、しかも、これら一つひとつを確実に把握することはたいへん難しい。さらに厄介なことに、これらはたえず、めまぐるしい変貌を遂げている。
そのような変化の中で、賃金を適正かつ確実に決定していくためには、たえず周囲の情勢を統計的に把握すると同時に、それらの変化と賃金の結びつきのあり方について、考え方や政策を整理しつつ、それを一定のルールなり、プランとして設定し、労使の間で納得し合っていくことが必要となろう。
本書は、右のような事情に即応しつつ、賃金を決めていくベースとなる賃金表の作り方、年々の調整の仕方を、ベアと定昇などにも重点を置きながら、できるだけ具体的に考えてみることとした。
従来の類似書にあっては、その考え方や手順についてふれたものは若干あったとしても、現実の賃金表の作り方や調整の仕方を具体的な数字をあげて説明したものは、あまりなかったのではないかと思う。
社会・経済・生活環境の変化や労働市場の変革に伴う年々の賃金決定を、例えば物価の変動との関連などで、賃金表の上でどう調整するかとか、また、中途採用者の賃金決定や配転や定年延長に伴う賃金決定の考え方やルールのあり方はどうかなど、変動する環境情勢を踏まえながら、できるだけ具体的に述べることとした。可能な限り平易に、しかも、考え方とその実際の両面にふれることにしたが、数字的な処理実務が多いだけに、必ずしも的確な表現を尽くしていない点が多々あると思う。
なお、本書は昭和四六年三月に初版が出版され、幸いにして多数の実務家の方々に利用していただいた。その後、年々の賃金の動向を踏まえ、新しい環境の中でのベア、昇給に利用できるよう内容を改め、数字の修正を行うよう心がけてはきたが、それでもなお十分でない点も多く、昭和五一年にはその後の大きな情勢の変化を踏まえ、内容を全面改訂し、さらに今回引き続いてかなり大幅の修正を行った。今後、読者の批判をまってさらに修正していくつもりである。
賃金決定の近代化のうえで、本書がいささかなりともお役に立てば幸いである。またいずれか一つの章を拾い読みしても理解できるように、章と章の間ではいささか重複した説明も行っておいたが、多忙な人にとっては便利であると思う。
本書を刊行するにあたって、中山祥子さん、野村文夫さん、日本賃金研究センターの事務局および産労総合研究所(旧産業労働調査所)出版部諸氏の全面的な、特に統計資料上の援助と有益な助言が多くあったことを付記して、感謝の意に代えたい。
昭和五七年三月二九日
著者
著者紹介
■楠田 丘(くすだ きゅう)・・・昭和23年九州大学理学部数学科卒、労働省(現厚生労働省)入省。労働省統計業務指導官、経済企画庁経済研究所主任研究官、アジア経済研究所主任調査研究員などを歴任。産労総合研究所、日本賃金研究センター代表幹事などを務める。著書に『賃金テキスト』『職能資格制度』『人材社会学』(以上、経営書院)など多数。
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