K:労務管理を主に法律面から専門的に取り上げている労務事情では、2024年の人事の課題というと、どのあたりがキーになると思っていますか?
H:まず足元というか、現場でぎりぎりの対応を迫られているのが、まさに2024年問題として、トラック運転手や建設業、医師等の時間外労働の上限規制だね。それから、労働条件明示や裁量労働制の見直しにも対応しなければならないし、障害者の法定雇用率も引き上げられる。法改正への対応以外にも課題は多いよね。人事の地図ではどう? 取材で企業の人に会う機会も多いでしょ。
K:話題になるのは……数でいえばやっぱり人的資本経営ですよね。どの情報をどうやって開示するか、あと、そもそもデータをどうとるか。これはどこに行っても話題になります。あとは会社によって状況が違うので結構課題感はバラバラな気がしますけど……ああ、一つありました。「テレワークをどうするか」。これも結構多いですね。
H:全員出社命令といったことかな?
K:現場の運用的にはそうなんですけど、そもそもテレワークとどう付き合うのか、ですよね。日本中コロナ禍である意味強制的にテレワークに対応させられたわけですけど、結局、自社がテレワークをどうするか結論を出さないといけないんだろうなと。
あくまで極端な所の話ですけど、学生や20代には、テレワーク制度を入れる働き方をしないような会社は選ばない、ぐらいの意見もあったり。
H:採用は本当に大変だよね。福利厚生面をよくしたり、初任給を含めて賃上げをするなど、「選ばれる」ための施策がどんどん重要になっている。もちろん、採用時だけではなくて、社内にも魅力がないといけない。
K:いわゆるエンゲージメントですか。報酬的な意味では、2023年は賃上げが盛り上がりましたしね。2024年もこの勢いで行くんですかね?
H:流れとしてはそうだろうし、最低賃金の引上げも含めて、企業には、人件費の見直しが求められているね。賃上げではなく雇用をめぐる問題だったけれど、労働組合のストライキも話題になったね。
K:池袋の西武百貨店ですね。背景にはいろいろあるんでしょうけど、まさしく労使関係の薄さみたいな所が、事態をさらにややこしくした気がしますね。
H:労働組合の役割も変わりつつあるけれど、そもそも団体交渉や争議行為のあり方自体を知らない人も増えている気がする。『人事の地図』でも、労使交渉の基礎知識を取り上げるんだよね。
K:賃上げの特集なんですが、若手だとやっぱり労使交渉自体に、「何それ?人事は何すればいいの?」みたいな戸惑いもあるみたいなんですよね。
H:これも、「失われた30年」の結果の1つかもしれないけれど、労使で知恵を出し合わなければ解決できない問題は多いからね。
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K:あとはインターンシップのルールも整理されつつありますけど……だいぶ一人歩きしてるみたいですね。
H:インターンシップから採用選考につなげる企業は増えているし、国としてもその方向性を後押しするということだよね?
K:そのとおりなんですけど、条件なども結構あるのに、単純に「インターンシップを採用につなげていい」だけしか知らない関係者が多いそうですよ。
H:法律で規制されているわけでもないし、企業にとっては、わかりにくい仕組みかもしれない。
K:いずれにしても、採用のミスマッチをなくしつつ、多様な人材に活躍してもらわないといけませんからね。