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賃金・賞与・退職金改訂4版 退職金規程と積立制度
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賃金・賞与・退職金立ち読み |
退職金制度はバブル経済崩壊以降泥沼のデフレ経済に陥り、従来の退職金制度を維持することは、企業の財政面における大きな企業リスクとなることが明らかになりました。今、まさに必要な退職金制度の抜本的見直しとは人事面での効果を求めながら財政面でのリスクを最小限に抑える制度を構築することです。経済や運用環境は好転もすれば悪化もします。一喜一憂しないで将来に向かって維持継続できる新しい退職金制度を構築することが急務です。本書は、これからの退職金制度を導入する際、または既存の退職金制度を見直しする際、「人事」と「財務」の2つの側面に留意しながら、何を把握し、何に注意し、どのような工程を経て行うべきかを解説しています。 ■三宅 直・著 |
目次
- はじめに
- 第1章 制度疲労を起こしてきた退職金制度
- 「常識」の「非常識」化
- 退職金準備手段の税制優遇化と年金化
- もう一つの「常識」…給付建て(確定給付タイプ)退職金制度
- 運用環境と退職金
- 運用益(利息)で支払っていた退職金
- 確定拠出年金法の施行
- 確定給付企業年金法の施行
- 新会計基準の導入(退職給付会計)
- 産業構造・雇用環境の変化…「労働力の漂流化」
- 厚生年金保険、厚生年金基金と退職金制度
- 第1次退職金ショック
- 第2次退職金ショック
- 中小企業の第2次退職金ショックは終焉せず!
- 中小企業の退職金制度の現状
- 第2章 退職金制度の捉え方
- 退職金制度の2つのパーツ
- 退職金規程
- 退職金積立制度
- 退職金制度、主たるものと従たるもの…この捉え方が制度設計のカギ
- 退職金制度新設・見直しの順序
- 第3章 退職金規程の重要項目
- 退職金制度の目的
- 確定給付タイプ(給付建て)か、確定拠出タイプ(掛金建て)か
- 退職金の支払い方法
- 「退職一時金等」と「掛金等」の計算方法
- (1) 主な「退職一時金等」の計算方法
(給与比例方式)(給与比例方式修正型)(基本給+役職手当比例方式)(第2基本給方式)(定額方式)(資格等級ポイント方式)(役職ポイント方式)(資格等級・役職ポイント方式) - (2) 主な「掛金等」の計算方法
(基本給連動方式)(勤続年数方式)(全員同額方式)(資格等級別金額確定方式)(役職別金額確定方式)(資格等級・役職別金額確定方式)
- (1) 主な「退職一時金等」の計算方法
- 支給水準
- 最初に退職金規程ありき
- 第4章 退職金積立制度
- 代表的な退職金積立制度(手段)
- 中小企業退職金共済制度(通称、中退共)
- (1) 中退共の概要
- (2) 中退共の図解
- (3) 予定運用利回り変動の影響
- (4) 確定拠出タイプ(掛金建て)の退職金規程
- (5) 確定給付タイプ(給付建て)の退職金規程
- (6) 中退共=退職金前払い、と認識すべし
- 特定退職金共済制度(通称、特退共)
- 厚生年金基金
- 確定給付企業年金(DB:Defined Benefit Plan)
- (1) 基金型企業年金(基金型DB)
- (2) 規約型企業年金(規約型DB)
- (1) 規約型 給付建てDB(本格DB)
- (2) 掛金(保険料)建てDB(簡易型CB)
- 確定拠出年金(DC:Defined Contribution Plan)(日本版401kプラン)
- (1) 日本版401kプランの概要
- (2) 拠出金の限度額(平成27年10月現在)
- (3) マッチング拠出
- (4) 企業の感じる魅力
- (5) 導入は慎重に、確定拠出年金は「変額退職金」です!
- 生命保険
- (1) 生命保険で退職金準備
- (2) 養老保険
- 預貯金(有税積立)
- 前払い退職金と退職金の完全廃止
- 確定拠出タイプに適した積立制度…制度比較
- 第5章 退職金制度設計の前提
- 3つの賃金…それぞれの支払い義務(債務)
- 年間人件費総額の把握
- 退職金制度の「健康診断」が必要!
- 確定拠出タイプ、確定給付タイプによる賞与の役割
- 退職金の性格…功績報奨・老後保障から後払い説へ
- 固定概念の打破…制度見直しを遂げるために
- 第6章 退職金制度見直しの行程
- 第1行程 現退職金制度から新退職金制度へ変更する予定年月日の設定と行程表の確認
- 第2行程 現行退職金規程の分析、内容の確認
- (分析用規程例)
- 退職金の支払い目的
- 退職金規程の適用対象者、適用除外者、および受給要件
- 「退職一時金等」の計算方法、および制度形態
- 支給水準の確認
- 支払方法、および支払時期
- 支払い対象となる勤続年数
- 退職金の調整
- 退職金の支給制限
- 退職金積立制度(手段)の確認
- 第3行程 「 既得権」と期待権の把握、退職事由別仮退職金一覧表の作成
- 「既得権」と期待権
- (1) 「既得権」
- (2) 「既得権」と退職事由別仮退職金
- (3) 期待権
- 退職金積立状況の確認
- 退職事由別仮退職金の把握と一覧表作成
- 「既得権」と期待権
- 第4行程 制度見直し時における「既得権」の保証の仕方
- 退職事由別仮退職金と積立金および不足額一覧表
- 制度見直しの方向性
- 「既得権」は2段(3段)構え
- (1) 「既得権」の設定と保証の仕方
- (2) 保証額の設定
- 確定給付タイプを維持した場合の不足金の準備
- 確定拠出タイプに変更した場合の不足金相当額の補填金準備
- 第5行程 新しい退職金制度の基本方針と骨格作り
- 「のれん分け」
- 具体的な支払い目的
- 支払い方(支払方法)
- 確定給付タイプ OR 確定拠出タイプ
- 「退職一時金等」または「掛金等」の計算方法
- (1) 資格等級と役職を基準にした方法
- (2) 役職のみを基準にした方法
- (3) 「退職一時金等」「掛金等」に差をつけない方法
- (4) 給与比例方式の継続、または給与連動方式
- 支給水準の決定
- モデル「退職一時金等」表、モデル「掛金等」表
- (1) 確定給付タイプのモデル「退職一時金等」表
- (2) ポイント方式(確定給付タイプ)の問題点
- (3) 確定拠出タイプのモデル「掛金等」表
- 受給要件と勤続年数
- 第6行程 退職金規程の不利益変更
- 不利益変更の法理
- 不利益の程度等の把握
- 「既得権」の確保の方法
- (1) ポイント方式導入の場合
- (2) 給与比例方式を継続し、支給水準を引き下げる場合
- (3) 確定給付タイプから確定拠出タイプへ変更
(参考文献-1) 退職金制度見直しによる旧制度清算金に関わる覚書 - (4) 定額方式における「既得権」の確保
- 会社の都合と従業員の理解
- 代償措置
- 第7行程 退職金積立制度(手段)の検討
- 新しい積立制度(手段)の検討
- タイプ別選択
(Aタイプ~Gタイプ) - 現行積立制度の取扱い、および金融機関との打合わせ
- 第8行程 退職金規程の作成
- 退職金規程の具体例
- 確定拠出タイプの退職金規程(規程例-1~規程例-4)
- 確定給付タイプの退職金規程(規程例-5~規程例-7)
- 退職金規程の具体例
- 第9行程 従業員説明会
- 説明会の要点
- 高年齢継続雇用制度と一体化した制度見直し
- それでも不同意者が出た場合
- 第10行程 新退職金制度に関する諸手続と新退職金制度運用開始
- 最終退職金規程の完成、労働基準監督署への届出と従業員への周知
- 積立制度の契約内容の変更・解約、新積立制度の契約
- 新制度運用開始
- 第7章 退職金制度と税・社会保険料
- 退職所得控除
- 退職金制度見直し・廃止時における一時金(清算金)に対する税の取扱い
- (1) 所得税基本通達
- (2) 企業内退職金制度から中退共・確定拠出年金制度に移行する際に清算される一時金
- (3) 定年後再雇用時、定年延長に際しての退職金支給
- (4) 退職金制度の廃止に伴い支払われる一時金
- 積立手段で養老保険を採用した場合の保険料の経費処理
- 《参考資料-1》「法人税基本通達」
- 《参考資料-2》「所得税基本通達」
- 積立手段で養老保険を採用した場合の社会保険料の取扱い
- 《参考資料-3》「団体養老保険の保険料について」
- 前払い退職金の社会保険料の取扱い
- 《参考資料-4》「 前払い退職金の社会保険料の取扱いについて」
はじめに
本書は、これから退職金制度を導入する際、または既存の退職金制度見直しをする際、「人事」と「財務」の2つの側面に留意しながら、何を把握し、何に注意し、どのような行程を経て行うべきかを基本的解説書として表したものです。
退職金制度の変遷を見ると、まず敗戦後から昭和30年代にかけては、大企業を中心に退職一時金制度として整備されていましたが、中小企業の場合、制度として確立したものを持つところはほとんどありませんでした。
日本経済が昭和30年代から高度経済成長期に突入していくなかで、次第に国民生活にも多少の余裕が感じられるようになり、この頃より老後の生活保障を充実させる政策が次々に打ち出されてきました。公的保障としては、昭和36年に国民年金制度が創設され、形の上では国民皆年金が達成されています。
このような状況の中で、退職金においても退職一時金の年金支払い化や中小企業への退職金制度の普及政策がすすめられ、その結果、厚生年金基金、税制適格退職年金といった企業年金や中小企業退職金共済、特定退職金共済などの共済制度が誕生しました。これらは、企業に税制上の優遇措置を与えることで、安定した退職金原資の確保を促すとともに、労働者の受給権確保を目的とするものでした。
これらの制度は、高度経済成長期の真っ最中に誕生しただけに、予定される運用利率を5%以上(この当時の法定利率は年5%とされており、この為、中小企業退職金制度6%、厚生年金基金の代行部分5.5%、税制適格企業年金はほとんど5.5%以上)に設定されていました。つまり、毎年5%以上の運用ができることを前提にして制度設計がされていたわけです。
高度成長の後半期(昭和45年~50年)になり賃金水準が春闘(毎年春先に行われる労働組合による賃上げ闘争)の影響で急上昇し、それに連動して退職金支給水準が大きく上昇(私は、これを第1次退職金ショックと呼び、第1章で解説しています)した時期がありましたが、退職金積立金の運用面には何ら問題なく、運用利率5%以上という設定は「至極当たり前の常識」でした。
しかしながら、平成に入りバブル経済がはじけると同時に日本経済は、「失われた10年」、「失われた20年」といった言葉に代表される閉塞感漂う状況になっていきました。その間、日本経済は「泥沼のデフレ経済」に陥るとともに円高、株安、低金利などは当たり前のこととなり、その後のリーマン・ショック、度重なる政権交代、ユーロ危機等、様々な要因も重なって、先行きの見えない危機的状況が続いていたといえます。
このような状況の中で企業年金は、運用難により莫大な積立不足を生じさせ、また中小企業退職金共済も累積欠損を発生させ、予定利回りの引き下げを余儀なくされました。将に運用利率5%は、日本経済が右肩上がりに成長し続ける中での常識であり、低成長やマイナス成長の時代においては非常識どころか「夢物語」でしかなくなったのです。
このことは、従来の退職金制度に大きな企業リスクが潜在することを認識させ、昭和時代の高度成長期や安定成長期に導入された退職金制度をそのまま維持運営することにレッドカードを突きつけました。
そして、従来の退職金制度を維持することは、企業の財務面における大きな企業リスクとなることが明らかになりました。これは、将に退職金制度の大変革の必要性を意味するものです。私は、本文の中でも指摘していますが、この大変革期を第2次退職金ショックと呼んでいます。
ただ、この第2次退職金ショックは、厚生年金基金や税制適格退職年金などの積立不足がクローズアップされたことにより、あたかも企業年金だけの問題であるかのように受け取られてしまった向きがあります。しかしながら、第2次退職金ショックは、あらゆる退職金原資の運用状況悪化や制度の形態に原因がありました。それならば、当然、第2次退職金ショックは、ほとんどの中小企業が影響を受けている問題です。単に、企業年金を導入していた企業だけの問題ではありません。
にもかかわらず、この間に退職金制度の抜本的見直しを断行した中小企業は、どれくらい存在するでしょうか?ほんの一部分、極々僅かな数でしかありません。廃止された税制適格退職年金を契約していた企業ですら制度廃止時に積立金の社員への分配、中退共などの他制度移管といった処理は出来ていても、全体的、且つ抜本的な制度見直しは全くしておらず、積立手段が変わっただけで旧態依然の制度を維持しているケースがほとんどです。
私は、このことに本書を以って大きな警告を発します。何故なら、従来の認識や発想でこれからの退職金制度を維持することは企業経営に計り知れないリスクを生じさせるからです。
勿論、退職金の計算方法を変更した企業はあるでしょう。しかしながら計算方法の変更は、賃金制度の見直しといった人事面だけの対応であり、財務面にはほとんど影響を与えません。今、まさに必要な退職金制度の抜本的見直しとは、人事面での効果を求めながら財務面でのリスクを最小限に抑える制度を構築することです。
経済や運用環境は好転もすれば悪化もします。その都度、一喜一憂しないで将来に向かって維持継続できる新しい退職金制度を構築することが急務です。このことも「失われた20年」が我々に教えてくれた教訓ではないでしょうか。
第1章では、退職金が抱えている多くの問題点について、その変遷を説明しながら解説していきます。特に現在の退職金に関わる諸問題を第2次退職金ショックとして捉え、従来の退職金制度からの脱却を進言します。
第2章では、退職金制度が「退職金規程」と「退職金積立制度」の2つのパーツから成り立っているということ、この2つのパーツは「主従関係」にあるということを理解していただきます。この関係をしっかりと認識することが、何よりも重要なことです。
第3章では、「退職金規程」とはどのようなものか、何故この規程が重要なのか5つの重要項目を中心に説明していきます。
第4章では、退職金原資を準備する為に、どのような積立制度(手段)があるのか、主な退職金積立制度(手段)を解説しながらみていきます。
第5章では、退職金制度を新たに設計、または見直す際に知識として必要な前提条件について説明します。
第6章では、退職金制度見直しの各行程を説明します。これにより誰にも頼ることなく企業が独自で、今後も維持継続が可能な退職金制度見直しを推し進めることができるようになっています。
最後に第7章において退職金制度と税・社会保険料について説明します。
皆さまのお役にたてれば幸いです。
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退職金制度はバブル経済崩壊以降泥沼のデフレ経済に陥り、従来の退職金制度を維持することは、企業の財政面における大きな企業リスクとなることが明らかになりました。今、まさに必要な退職金制度の抜本的見直しとは人事面での効果を求めながら財政面でのリスクを最小限に抑える制度を構築することです。経済や運用環境は好転もすれば悪化もします。一喜一憂しないで将来に向かって維持継続できる新しい退職金制度を構築することが急務です。本書は、これからの退職金制度を導入する際、または既存の退職金制度を見直しする際、「人事」と「財務」の2つの側面に留意しながら、何を把握し、何に注意し、どのような工程を経て行うべきかを解説しています。 ■三宅 直・著 |