医療
看護管理看護現場に活かすコーチング
医療
看護管理
■多羅尾 美智代・著 |
はじめに
今、看護管理者の間では、スタッフのやる気を引き出すスキルとして「コーチング」が注目を集めています。看護系の雑誌にも「コーチング」の文字が目立つようになりました。
私は、プロのコーチではありません。特にコーチとしての訓練を受けたわけでもありませんが、最近、コーチングの研修を頼まれる機会が増えました。三木市民病院に在職中、看護界では比較的早い時期に、「個人目標管理」を取り入れ、「スタッフのやりがい支援と組織の活性化」を図ってきました。その関係で目標管理の研修の講師を頼まれる機会が増え、現在もその活動を続けています。
私のコーチングとの出会いは、日本総合研究所から目標管理の研修を依頼された際、担当者から、「面接スキルとしてコーチングも入れませんか」と提案されました。当時、看護界ではコーチングが話題になり始めたころで、私も非常に関心を持っていましたので、早速、㈱アニメートエンタープライズ代表取締役・野津浩嗣氏のコーチングセミナーに参加したのが、私のコーチングの始まりです。
その後も何回かセミナーを受講し、コーチングに関する本を読みあさり、最近では、目標面接にコーチング技法を用いた研修を実施しています。研修に参加していただいた皆さんから、「身近な事例を用い、厳しさの中にも心がホッと温まる研修」との評価をいただいています。
目標管理では、上司と部下の対話型の面接が非常に重要です。今までの看護現場の管理者は、指導型・説得型・指示命令型で部下を引っ張るマネジメントが主流でした。面接の場面では、「部下に指導しなければいけない」と気負ってしまったり、不適切な目標をあげたスタッフに「目標を修正するように説得しなければいけない」と思ったりする管理者も多く、結果的に、「面接がうまくできず、目標管理が軌道に乗らない」、「管理者の力量でスタッフのやる気に差が出る」などの声を聞くことが少なくありません。
コーチングは、教えたり、説得したり、叱咤激励で引っ張ったりするのではなく、相手が持っている力を引き出し、相手が自発的に行動を起こせるようにするためのコミュニケーション技術です。
目標管理の研修にコーチングを取り入れ、その理念を理解し、コーチングスキルを使う体験をしてもらうことで、「コーチングを学んで気持ちが楽になった」「コーチングを意識することで職場のコミュニケーションが良くなった」との声がたくさん寄せられます。
目標面接だけではなく、日常のスタッフとのかかわり、他部門とのかかわり、患者さんやその家族とのかかわり、自分の家族とのかかわりにコーチングを活用することで、相手を傷つけることなく、相手の主体的な行動を促すことができます。
このたび、産労総合研究所編集部の勧めで「看護現場に活かすコーチング」を出版することになりました。最初は「プロのコーチでもない私がコーチングの本を出すなんて、おこがましいかな?」という迷いもありましたが、私自身の考えを整理するチャンスでもあるし、それが看護現場で活躍中の皆さんのお役に立てるなら、と思い直すことでやっと決心がつきました。皆さんからのご意見・ご批評をいただければ幸いです。
なお、本書は、産労総合研究所「看護部マネジメント」誌の「実践コーチング そのときあなたは?」(二〇〇四年二月一日号~二〇〇五年一一月一日号に連載)に加筆修正したものです。私自身がコーチングセミナーで得た知識や資料、また数々の本から得た知識を、私なりに解釈してまとめたものであることも付け加えます。ことに㈱アニメートエンタープライズ代表取締役・野津浩嗣氏からは、たくさんの知識や知恵をいただきました。心から感謝申し上げます。
著者紹介
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