医療
看護管理改訂版
看護職の人材育成と人事考課のすすめ方
医療
看護管理
■楠田 丘/斎藤 清一・共著 |
はじめに
今日、各医療機関が抱える人事問題は、大きく2つあります。
1つは、年功に代わる新しい処遇基準の確立であり、他の1つは、各人の意思と適性に基づくキメの細かい能力開発と人材活用および人材の定着をいかに図るかです。
一方、医療機関を取り巻く経営環境は、医療費赤字解消に向けて、国は、医療保険制度の改定、薬価基準の引き下げなど、一段と行政指導を強化しており、医療産業の先行きは、まったく不透明です。
これらの厳しい難局にどう対応したらよいのでしょうか。時代は、低成長、高齢化、国際化、高度情報化、価値観の多様化といった変革の21世紀に突入しています。その筈えの1つは、人材を育て、人材をいかに活用するか、といった人材戦略と組織戦略に解決の糸口があります。
人材を育て、その人材を最大活用するためには、学歴、男女、勤続という年功による昇進、昇格、昇給慣行は捨てなければなりません。
本人の意思や適性を無視した年功による人材活用では、時代の変化に対応できないからです。本人の意思や適性、能力(職能資格制度)をベースに個の尊重の人事管理(加点主義)に切り替え、その時、その所、その人にふさわしい基準を設定して絶対考課を行い能力開発を進めます。上司は部下の能力にふさわしい目標設定に留意しながらチャレンジと自主性を引き出し目標の達成に向けて適宜適正なアドバイスを行います。万一、未達成目標が生じた場合は、なぜ、そのような結果になったのか、原因分析を中心にその事態改善について部下と上司で徹底した話し合いを行い、その対処策を明確にします。これらの対処策、改善案は次期目標として取り上げ、部下と上司の二人三脚で英知を絞り、目標達成に向けて努力します。これが能力開発であり、人事考課です。
しかし、病院で人事考課の話をしますと「優れている人と劣っている人を選別する道具である」といった不信感に満ちた意見が多いのにはおどろきを感じます。「選別の論理」の相対考課は、非公開で行われているため、人材育成に役立てることはできません。
これに対して絶対考課は、基準を明確にし、その人のみを見つめた考課です。
看護職における人事考課導入のねらいは、まさに看護職として最新の技術を修得することと、患者理解による「患者満足の看護サービスの提供」です。この目標達成のためには、 (1)考課基準を明確にした絶対考課を導入すること
(2)能力開発や職務拡大などの人材育成や事態改善に直結した考課制度を確立すること これに関して大切なのは、一人ひとりの意思と適性を受け止める目標面接、つまりC.B.0が制度化されており、かつ部下に対し考課結果のフィードバックが明確にされていること
C:Challenge&Create-Courageous
B:By
O:Objectives
(3)考課基準の客観化、納得化のために人事考課者訓練や目標面接訓練がしっかりと行われていること
(4)等級基準の整備とともに能力開発制度が体系化されていること
(5)昇格、昇進、昇給、賞与への人事考課の反映が明確なルールのもとに実施されていること などが必要であり、また留意すべき点です。
本書は以上のような観点に立ち、初めて人事考課を勉強する看護職の管理監督者を対象に、絶対考課の理念(能力開発と組織活性化への直結)と考課制度の設計および考課基準の明確化、人材育成への反映方法などそのノウハウについてやさしく解説しました。
公平で納得性のある人事考課とは何か、スタッフの能力開発のためにはどのような職務基準を設定し、どう職務拡大を図っていくべきなのか、より有効な人事考課の実施に留意して、そのポイントを理論と実務でまとめてみました。
本書は管理監督者のみならずスタッフの方々にも読んでいただき、人事考課について真の理解をいただきたく思っています。
看護職の人事考課制度の設計と導入の手引書としてご活用いただければまことに幸いです。
著者紹介
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