転宅費用,赴任旅費,赴任手当・支度料を支給する企業は9割以上
転園・転学費用補助制度のある企業は,大企業で7割
転居を伴う転勤を命じられると、仕事の引継ぎとは別に、転居手続き、転園・転校手続き、引越し、荷ほどき、挨拶回りと、さまざまなことを短い期間で処理しなくてはならない。本人や家族にとって、身体的・精神的な負担は大きいともいえる。そのため企業では、その負担を軽減するために、転勤に伴う諸費用の負担・補助をはじめとして,休暇の付与,赴任手当や帰省旅費の支給など、さまざまな福祉施策を準備している。
当所では、2013年7~8月、6年ぶりに「転勤者への福祉施策に関する調査」を実施した。
調査要領
【調査対象】当所の会員読者から一定の方法で抽出した企業2,000社
【調査時期】2013年7~8月
【調査方法】郵送によるアンケート方式
【調査時点】2013年7月1日現在または直近の制度改定時期
【集計対象】締切日までに回答のあった208社。制度の内容については,転勤のある企業143社
調査結果のポイント
- 【転勤の有無と福祉施策の実施状況】
- 通勤できない遠距離事業所をもつ企業は,1,000人以上規模で9割以上
- 転勤のある企業の半数以上で転勤の対象・対象外の区分を設けている
- 転勤対象とならないのは,一般社員や地域限定社員が約5割
- 転勤者への福祉施策では,転宅費用,赴任旅費,赴任手当・支度料を支給する企業は9割以上
- 社宅・寮の提供は8割,家賃補助は7割強
- 別居手当を支給する企業は9割以上
- 【赴任費用の援助等】
- 赴任手当・支度料の支給方式は,家族構成別定額・職位別定額が4割と多い。赴任手当・支度料のモデル支給額(定額,家族帯同:本人+ 配偶者+ 子ども2人)は一般社員22.6万円
- 赴任旅費として,「宿泊料+日当+交通費」を支給する企業は5割以上
- 子どもの転園・転学費用の補助制度がある企業は大企業で7割,中小企業は3割
- 赴任距離にかかわらず一律で赴任休暇を与える企業が9割以上,日数は家族帯同で4.1日
調査結果の概要
1 転勤対象者の範囲
転勤のある企業について,転勤の対象となる社員とならない社員の区分の有無をみると,区分を設けている企業は53.2%,区分を設けていないが対象としない社員がいる企業が14.9%,区分を設けていない企業が31.9%で,約7割弱(68.1%)の企業には,転勤を免除されている社員がいる。
転勤を免除されている社員がいる企業について,どのような社員を対象としていないのかをみてみると(転勤を免除されている社員がいる企業=100(複数回答)),一般職(49.5%)と地域限定社員(46.2%)が4割台あるほか,育児・介護中の社員が2割台(24.7%),現地採用社員(19.4%),現業・研究職など特定の職種(12.9%)が1割台であった(図1)。
2 企業が実施している転勤者への福祉施策
転勤に伴い社員はさまざまな支出を余儀なくされる。企業は,これに対してどのような補助,すなわち福祉施策を実施しているのであろうか。本調査では,(1)転勤関連費用の福祉施策,(2)住宅関連費用の福祉施策,(3)別居(単身赴任)関連の福祉施策の3つに分けて,尋ねてみた。
(1) 転勤・赴任費用・休暇関連
転勤・赴任関連費用の補助等として,ほとんどの企業が実施している福祉施策(複数回答)は,転宅費用(荷造り運送費)補助の97.9%,赴任旅費(交通費や日当)の支給の95.1%,赴任手当・支度料の支給の94.4%で,いずれも9割以上に上るが,転園・転学費用の補助が48.6%で5割弱,着後手当の支給は12.7%と1割強にすぎなかった。休暇関連の福祉施策として,赴任休暇の付与(荷造り等の休暇)は85.9%と8割台の実施率であったが,下見出張・下見休暇の付与は34.5%と3分の1の実施率であった(図2― (1))。
(2) 住宅関連費用
住宅関連費用の福祉施策では,社宅・寮の提供(83.1%)と,家賃補助(75.4%)が7~8割台で,地域手当の支給が3割台(35.9%),転勤者の留守宅の取扱いに関しては,留守宅の借上げ,賃貸斡旋(20.4%),留守宅管理サービス(12.0%)と,それぞれ2~1割台の実施率であった(図2― (2))。
(3) 別居(単身赴任)関連
別居(単身赴任)関連の福祉施策をみると,別居手当(単身赴任手当)の支給が93.7%,帰宅(省)旅費の支給が83.8%で,これらは8~9割の実施率であった。これに対して,帰宅(省)休暇の付与は9.2%と1割に満たない(図2― (3))。
3 赴任手当
赴任手当は、転勤に伴う諸費用のうち転宅料(引っ越し費用)と旅費・交通費以外の支出に充てる費用である。
各社が採用している支給基準=支給方式をみると(複数回答)、家族構成別定額44.4%、職位別定額の42.1%が多く、このほか全員一律定額が15.1%、全員一律定率が8.7%、家族構成別定率が7.9%となっている(図3)。
赴任手当(支度料)の額を、部長クラス・課長クラス・一般社員に分けてみると,家族帯同赴任(配偶者と子ども2人のモデル)でそれぞれ27.8万円,25.9万円,22.6万円,単身赴任・独身者で13.7万円,12.6万円,10.6万円であった。
4 赴任休暇
赴任休暇の付与方法をみると、9割以上の企業が距離によらず一律に付与している。一律付与の場合の赴任休暇の付与日数をみると、家族帯同赴任が4.1日、単身赴任が2.8日、家族の呼び寄せが3.1日であった。