人事労務分野の情報機関である産労総合研究所(代表・平盛之)は、このたび「2021年度 労働時間,休日・休暇管理に関す る調査」を実施しました。本調査は1982(昭和57)年より実施しています。
在宅勤務の実施率は7割
うち74.2%がコロナ禍の緊急措置で実施
今回の調査項目は1労働時間・休憩時間、2年間休日・季節的休暇、3年次有給休暇、4時間外・休日労働、5在宅勤務である。従来は1〜4の項目で調査を行なってきたが、新型コロナウイルス感染拡大を受けて、テレワーク、とくに在宅勤務 を急遽導入する企業が少なからず見受けられたため、設問に含めた。
なお、今回の調査は2014年以来7年ぶりの調査となる。2014年の数値を掲載している項もあるが、この間、多数の法改正があり、企業における働き方についても大きな変化が起きていることから、単純な比較をするのは難しい点に留意いただきたい。
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調査結果のポイント
(1)労働時間・休憩時間
- 1日の労働時間は、全体平均7時間46分、1週の所定労働時間は全体平均で7時間46分、年間所定労働時間は、全体平均で1,900時間18分。
(2)年間休日・季節的連続休暇
- 週休日と国民の祝日等をあわせた年間所定休日日数は、平均119.7日で前回調査(2014年度)より増加したものの、依然として120日には届かない状況が続いている。
(3)年次有給休暇
- 勤続6カ月経過時の年休付与日数は平均10.7日で法定の義務(6カ月経過日に10日以上の年休を付与)を若干上回った。以後は法定日数を1日程度上回り、勤続4年6カ月以降は法定に近くなる。最高平均付与日数は20.4日。
- 使用者が年休の5日について時季を指定して取得させることが義務となったが、この5日の時季指定を実施した企業は49.2%。
(4)時間外・休日労働
- 36協定の有効期間は、1年とする企業が97.3%。限度時間を決める単位(一定期間の区分)については、1カ月とする企業が61.8%である。限度時間の分布をみると、法定限度時間である45時間が69.2%で最も多く、平均は45.3時間。
(5)在宅勤務
- 在宅勤務を実施している企業は70.6%。在宅勤務の対象が、全社員は44.7%、特定部署のみは37.1%。1週間での回数上限は、上限の定めなしが63.6%。中抜け時間は認めない企業が33.3%。
調査要領
【調査名】「2021年度 労働時間,休日休暇に関する調査」
【調査対象】上場企業および当社会員企業から任意に抽出した約3,000社
【調査時期】2021年5~6月
【調査方法】郵送によるアンケート調査方式
【集計対象】締切日までに回答のあった187社で集計。集計企業の内訳は別表を参照。
【留意点】調査項目ごとに無回答があるため、それを除いて集計した。そのため、各表で集計社数は異なっていることに留意されたい。
調査結果の概要
・労働時間・休憩時間
(1)1日、週、年間の所定労働時間 ―年間平均1,900時間18分
本調査では、所定労働時間について、法定労働時間の定めがある1日(8時間)および1週(40時間)と一年間の3つに分け、また事業場の職場を1本社・事務部門、2現業・生産部門、3営業・販売部門(外勤)、4研究・開発部門の4部門に分けて調査した。
1日の労働時間では、本社・事務部門7時間46分、現業・生産部門7時間45分、営業・販売部門(外勤)7時間47分、研究・開発部門7時間48分で全体の平均は7時間46分となった(図表1)。
1週の所定労働時間をみると、本社・事務部門7時間46分、現業・生産部門7時間45分、営業・販売部門(外勤)7時間47分、研究・開発部門7時間48分であった。全体の平均は7時間46分となる。
年間所定労働時間は、本社・事務部門1,895時間11分、現業・生産部門1,910時間14分、営業・販売部門(外勤)1,893時間37分、研究・開発部門1,903時間28分。全体平均は1,900時間18分であった。
(2)休憩時間 ―日勤者、本社・事務部門の平均休憩時間58分49秒
休憩時間(昼休み+午前+午後の合計)の平均は、本社・事務部門58分49秒、現業・生産部門59分36秒、営業・販売部門(外勤)59分04秒、研究・開発部門57分56秒であった。
また、午前に休憩時間を設定している部門は、本社・事務部門13.7%、現業・生産部門25.4%、営業・販売部門(外勤)17.3%、研究・開発部門20.4%となっている。一方、午後に休憩時間を設定している企業は、本社・事務部門19.4%、現業・生産部門35.4%、営業・販売部門(外勤)25.5%、研究・開発部門25.5%で、午前より午後に休憩時間を設定する企業のほうが比較的多い。
図表1 労働時間調査結果の概要一覧
・年間休日・季節的連続休暇
(1)年間所定休日日数 ―平均119.7日―
週休日と国民の祝日等をあわせた年間所定休日日数は、平均119.7日で前回調査(2014年度)より増加したものの、依然として120日には届かない状況が続いている(図表2)。部門別にみると、本社・事務部門119.7日、現業・生産部門118.3日、営業・販売部門(外勤)120.2日、研究・開発部門120.9日となっており、営業・販売部門(外勤)と研究・開発部門が若干多い一方で、現業・生産部門が少ない(図表2)。
(2)季節的な連続休暇 ―87.7%が連続休暇あり―
年間休日日数に記入のあった企業について、週休日および国民の祝日・休日以外にどのような休日を設けているかをみたところ、ほとんどの場合、年末年始や夏休み、ゴールデンウイークなどが該当した。これらの休暇では、休日(週休日、祝祭日、特別休暇、年休〈計画年休〉等)を組み合わせて連続休暇として設定する企業が少なくないため、連続休暇を設けているか、その休暇の該当するものは何かについて尋ねた。
集計によると、連続休暇については87.7%が「設けている」と回答した。この連続休暇の内訳で最も多いのは「年末年始休暇」の97.0%。次いで「夏休み・お盆休み」82.3%、「ゴールデンウイーク」70.1%が続く。「その他の連続休暇」については26.2%となっているが、具体的な名称や内容としては、「創立記念日」や「誕生日休暇」、自由なタイミングで連続で取得し、長期休暇とする前提の「連続休日」などがあったほか、オリンピックイヤーということで、お盆休み分の休日をフレキシブルに取得できるとした企業もあった。
図表2 2021年度の年間休日日数
図表3 季節的な休暇と休日数の内訳
・年次有給休暇
(1)年休の付与状況 ―最高付与日数平均20.4日―
勤続6カ月経過時に付与している年休は平均10.7日で法定の義務(6カ月経過日に10日以上の年休を付与)を若干上回った(図表4)。以後の経過では法定を1日程度上回り、勤続4年6カ月以降は法定に近くなる。最高平均付与日数は20.4日である。
(2)年休5日の時季指定 ―49.2%が実施―
労基法の改正により、2019年4月からすべての企業において、年10日以上の年休が付与される労働者に対し、年休日数のうち5日については使用者が時季を指定して取得させることが義務となった。この5日の時季指定について各社の実施状況をみると、実施した企業は49.2%、「する必要がなかった」50.3%となった(図表5)。
また、時季指定の方法については、「全社・事業場規模で計画的付与制度を利用」が多かった。
図表4 年次有給休暇(年休)の平均付与日数
図表5 年休5日の時季指定と方法
・時間外・休日労働
(1)36協定の締結内容 ―限度時間1カ月に設定が6割、平均45.3時間―
36協定の有効期間の定めをみると、「1年」とする企業が97.3%であった(図表6)。限度時間を決める単位(一定期間の区分)については、「1カ月」とする企業が61.8%である。限度時間の分布状況をみると、法定限度時間である「45時間」が69.2%で最も多く、平均は45.3時間であった(図表7)。
図表6 時間外労働協定(36協定)の有効期間
図表7 時間外労働の限度時間決定方法と平均限度時間数
・在宅勤務
(1)在宅勤務の実施状況 ―実施企業は70.6%―
在宅勤務の実施状況について実施の有無とコロナ対応を軸に、何を機に実施したかについて尋ねた。集計結果によると、在宅勤務を実施している企業は70.6%であった(図表8)。導入時期をみると、「コロナ対応のための緊急措置として実施」は74.2%、「コロナ対応が必要となる前から規程に基づく制度として導入」が3.0%、「以前から制度として導入していたが、コロナ対応として対象拡大」が17.4%、「その他」5.3%であった。在宅勤務を実施している企業の2割は、コロナ以前から制度があったことになる。
(2)在宅勤務制度の対象・回数上限等 ―全社員対象44.7%、特定部署のみ37.1%―
在宅勤務の対象において、全社員とする企業は44.7%、特定部署のみは37.1%、「その他」14.4%となっている(図表9)。特定部署のみの具体的内容としては、「緊急事態宣言対象地域の事業所」など、地域による指定や、「フレックスタイム適用者、育児介護の時短者、管理職」など、特定の制度の対応者に適用する企業があった。1週間での回数上限をみると、「上限の定めなし」63.6%、「定めあり」が17.4%となっている。「原則として全日が在宅勤務」は0.8%、「その他」は12.1%であった。勤務形態では、「終日のみ」が36.4%とで最も多いが、「半日も可」は26.5%、「時間単位も可」は22.7%となっており、著しい差はない。
(3)申請の有無、労働時間制度、出退勤管理、制度、休憩時間、中抜け等
在宅勤務の申請方法では、「事前申請が必要で期限なし」が43.2%で最も多く、「事前申請が必要で期限あり」は21.2%、「事前申請は必要ない」15.9%と続く。労働時間の管理方法をみると、「出退勤管理システムを利用」が56.1%と過半数を占めた。次いで「上司にメールやチャットで始業・就業を報告」が34.1%となっており、「ウェブ上で出勤簿に記入」21.2%が続く。「特に出退勤管理を行わない」も3.8%あったが、フレックスタイム制などの変形労働時間制との関連についても考えたいところである。
在宅勤務下での休憩時間の定め方をみると、「一斉付与の時間に取得」が79.5%。概ね在宅勤務だからといっても出社時とは変わらず、就業規則のとおりに働くようにしているようだ。
また、労働時間制度の適用状況をみると、「通常の労時間管理を行っている」が81.8%で大半を占め、「フレックスタイム制を適用」13.6%、「事業場外みなし労働時間制を適用」11.4%、「変形労働時間制を適用」3.0%、「専門業務型裁量労働制を適用」2.3%、「企画業務型裁量労働制を適用」0.8%となった。
中抜け時間をどう取り扱うかをみると、「中抜けは認めない」33.3%が最も多く、「半日単位、時間単位の年休を取得」22.7%、「休憩時間として扱う」18.9%、「所定労働時間働いたものとして扱う」15.2%が続く(図表10)。
図表8 在宅勤務の実施状況
図表9 在宅勤務の対象・回数上限・形態(複数回答)
図表10 在宅勤務中の中抜け
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