人事労務分野の情報機関である産労総合研究所(代表・平盛之)は、この度、「人材開発の実態と今後の方向性に関する調査」を実施しました。本調査は、大きな転換期にある企業の人事・人材開発について、現状と今後の方向性を探るべく行ったものです。
求める人材像を定義している企業は5割強
4割強の企業が過去5年以内に教育体系を見直し
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主なポイント
(1)求める人材像と教育体系の見直し、ISO 30414への対応
- 求める人材像を「定義している」企業は56.8%。過去5年以内に教育体系を「見直した」企業は46.0%。
- ISO30414 に定める人的資本報告基準に基づいた人材開発分野の情報開示について、「何らかの情報開示を行って
いる」と回答した企業は13.3%。
(2)人事・人材開発における基本的なスタンス
- 「キャリア開発の責任」については、現在・将来ともに「会社にある」とする傾向が若干高い。
- 「教育のスタンス」では、「一律・底上げ」とする企業が現在78.2%から将来47.4%と大きく減り、将来的には「選抜・手上げ」とする割合が高くなっている。
(3)人材開発担当部門の組織概要
- 人材開発のスタッフの平均人数は、「部長クラス」1.2人、「課長クラス」1.5人、「係長・主任クラス」2.2人、「一般社員」 3.1人、「契約社員などの非正規社員」1.4人で、合計平均人数は5.9人。
- 「人材開発業務のみ行っている」組織は17.4%で、8割以上が「一部、他の業務も兼務している」状況。
(4)「一人前」になるまでの期間、昇進管理
- 新入社員が「一人前」になるまでの期間として想定しているのは、「入社3年」が49.1%で約半数を占める。
- 昇進時期について、「入社から一定期間は差がつかないようにしている」企業は64.2%。同期入社者の昇進に差がつかないように定めている期間としては「入社3年まで」40.4%、「入社4〜5年」33.7%など。
調査要領
【調査名】 2022年度 人材開発の実態と今後の方向性に関する調査
【調査対象】全国1・2部上場企業と過去に本調査に回答のあった当社会員企業から任意に抽出した3,000社
【調査時期】2022年2~3月
【回答状況】締切日までに回答のあった166社について集計
2022年度 人材開発の実態と今後の方向性に関する調査 結果概要
[1]求める人材像と教育体系の見直し、ISO30414への対応
(1)求める人材像の定義と教育体系の見直しの有無
求める人材像を「定義している」企業は56.8%で、うち、過去5年以内に「見直した」企業は38.6%である。
教育体系について、過去5年以内に「見直した」企業は46.0%、「見直していない」26.4%、「現在見直している、検討中」は27.6%となっている。企業規模別にみると、1,000 人以上企業と300~999 人企業で「見直 した」「現在見直している、検討中」が高く、299 人以下企業で「見直していない」が高くなっている。
図表1-1 求める人材像の定義と過去5年以内の見直しの有無
図表1-2 過去5年以内の教育体系の見直しの有無
(2)人材開発部門におけるISO 30414への対応
ISO 30414(人的資本に関する情報開示のガイドライン) に定める人的資本報告基準に基づいた人材開発分野の情報開示について、「何らかの情報開示を行っている」と回答した企業は13.3%で、1,000 人以上企業 では25.7%と4 分の1、300~999 人企業では1割以下、299 人以下企業では行っている企業はなかった。
図表1-3 人的資本報告基準に基づいた情報開示の有無
[2]人事・人材開発における基本的なスタンス
自社の人事・人材開発における基本的なスタンスについて、1)キャリア開発の責任、2)組織上の育成責任者、3)教育のスタンス、4)キャリアパスの考え方、5)採用する人材、6)評価の対象、7)異動・配置の考え方の7項目について、現在と将来の姿を聞いた。教育のスタンスでは、「一律・底上げ」とする企業(A+どちらかというとA)が現在78.2%→将来47.4%と大きく減り、「選抜・手上げ」へ移行する割合が高くなっている。この傾 向は大企業・製造業で顕著だった。
図表2 現在と将来の人事・人材開発の基本的なスタンス
[3]人材開発担当部門の組織概要
(1)人材開発スタッフの人数
人材開発スタッフの平均人数は、「部長クラス」1.2人、「課長クラス」1.5人、「係長・主任クラス」2.2人、「一般社員」3.1人、「契約社員などの非正規社員」1.4人となっている。部門の合計平均人数は5.9人であった。
図表3-1 人材開発スタッフの合計人数の分布
(2)人材開発部門のスタッフの兼務状況
人材開発部門スタッフが「人材開発業務のみを行っている」組織は全体で17.4%で、8 割以上が「一部、他 の業務も兼務している」状況である。兼務状況は、規模が小さくなるほど高い。
兼務している業務をみると(複数回答)、「採用」91.7%、「人事制度運用」57.1%、「人事企画」56.4%など が高かった。
図表3-2 人材開発部門のスタッフの兼務状況
[4]「一人前」になるまでの期間、昇進管理
(1)新入社員が「一人前」になるまでの期間
新入社員が「一人前」になるまでの期間として想定しているのは、「入社3 年」が49.1%で約半数となった。 全体的に、1,000人以上企業は入社3年以内とする傾向が高く、300~999人企業、299人以下企業はもう少し長 い期間を設定しているようである。
図表4-1 新入社員が「一人前」になるまでの想定期間
(2)同期入社者の昇進管理
同期入社者の昇進管理について、「入社から一定期間は差がつかないようにしている」企業は64.2%。差が つかないように定めている期間としては「入社3年まで」40.4%、「入社4~5年」33.7%が高い。
図表4-2 同期入社者の昇進管理の運用方法
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※ 詳細データは「企業と人材」2022年5月号にて掲載しています。
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