新入社員教育は「短期育成・早期に現場へ」の傾向
育成期間は「入社後1年以内」が約7割
人事労務分野の情報機関である産労総合研究所(代表・平盛之)は、4年ぶりに「大学・大学院卒新入社員教育の実態調査」を実施しました。調査結果がまとまりましたのでご報告します。
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調査結果のポイント
(1)大学・大学院卒新入社員を採用した企業は全体の9割
- 2014年4月入社の大学・大学院卒新入社員の採用を行った企業は91.9%。
- 外国籍社員を採用した企業は全体の18.1%。
- 新入社員教育の実施状況は、「導入教育」が93.6%で最も高く、次いで「OJT」の89.3%など。
(2)新入社員教育は短期育成志向
- 新入社員教育に対する考え方としては、短期育成志向が7割、長期育成志向が2割など。
(3)新入社員の育成期間は入社後1年以内が7割
- 新入社員の育成期間は、「入社後1年未満」が36.0%で最多。2番目は「入社後1年間」の29.8%で、あわせて約7割が1年以内に設定している。
(4)教育費用平均額は入社前教育40,527円、導入教育185,772円
- 新入社員1人当たりの教育費用の平均額は、入社前教育は40,527円。導入教育は185,772円。
- 教育費用の対前年度増減状況は、入社前教育・導入教育ともに「ほぼ同額」が高い。
(5)新入社員指導員制度を導入している企業は約6割
- 新入社員指導員制度を「導入している」企業は59.3%で、標準的な指導員の年齢は「25~29歳」が62.8%で最も多い。
(6)新入社員指導員の業務は多岐にわたる
- 指導員が行う業務としては、「日常的な業務指導・相談」95.3%、「課題設定・支援とその評価・指導」61.5%、「日報・業務レポート等の作成支援と指導」60.1%など。
調査要領
【調査対象】全国1・2部上場企業および当社会員企業から任意に抽出した3,000社
【調査時期】2015年1月末~3月上旬
【調査方法】郵送によるアンケート方式
【集計方法】集計締切までに回答のあった248社(8.3%)。
調査結果の概要
(1)大学・大学院卒新入社員を採用した企業は全体の9割
大学・大学院卒新入社員の採用状況
2014年4月入社の大学・大学院卒新入社員の採用を行った企業は91.9%。規模・産業別にみても299人以下で78.3%となった以外は、全区分で9割を超えている。外国籍社員を採用した企業は全体の18.1%だった(図表1)。
新入社員教育の実施状況
新入社員教育の実施状況についてみると、「導入教育」が93.6%で最も高く、次いで「OJT」89.3%、「入社前教育」85.4%、「フォロー教育」83.7%、「現場実習」70.8%などとなっている(図表2)。
図表1 2014年度大学・大学院卒新入社員の採用の有無
図表2 新入社員教育の実施状況(複数回答)
(2)新入社員教育は短期育成志向
新入社員教育の考え方
新入社員教育に対する考え方をみると、「長期育成型」は22.7%、「短期育成型」は70.2%、「中間型」は7.1%と、全体の7割が「短期間で育成し早く現場へ」としている(図表3)。
規模・業種別にみても、おおむね同じ傾向にある(図表4)。
図表3 新入社員教育に対する考え方
図表4 新入社員教育に対する考え方
(3)新入社員の育成期間は入社後1年以内が7割
新入社員の育成期間
人事制度上、または教育体系上の新入社員の育成期間(導入教育から現場実習、フォロー教育)は、「入社後1年未満」が36.0%で最も多い。次いで「入社後1年間」29.8%となっており、全体の7割近くが1年以内に設定していた。規模別にみると、「入社後1年未満」は3,000人以上で18.5%、299人以下で50.8%と、規模による違いが大きい(図表5)。
これを過去の調査結果と比較すると、「入社後1年未満」の割合は、2005年度調査(22.5%)でいったん落ち込んだあと、2010年度調査(28.3%)と今回の2014年度調査(36.0%)で再び増えてきており、全体的に育成期間は短期化の傾向にあるといえる。
図表5 新入社員の育成期間
(4)教育費用平均額は入社前教育40,527円、導入教育185,772円
1人当たりの教育費用の平均額
新入社員1人当たりの教育費用の平均額についてみると、入社前教育は40,527円で前回調査(43,798円)より減少、導入教育は185,772円で前回調査(165,191円)より増加となっている。(図表6)。
1人当たりの教育費用の対前年度増減状況
新入社員1人当たりの教育費用を対前年度の増減状況でみると、入社前教育(87.0%)・導入教育(79.8%)ともに「ほぼ同額」とする企業が多く、「減少」は前回調査と比較して低下している(図表7)。
図表6 1人当たりの新入社員教育費用の平均額
図表7 教育費用の対前年度増減状況(2013年度と2014年度の比較)
(5)新入社員指導員制度を導入している企業は約6割
新入社員指導員制度の実施状況
「新入社員指導員制度」とは、職場に配属された新入社員を、会社が任命した先輩社員がマンツーマンで指導する制度をいう。これを「導入している」企業は59.3%、「導入していない」企業は35.8%となっている。規模別でみると、3,000人以上で78.6%、1,000~2,999人および300~999人でも67%台と比較的高い導入率だが、299人以下になると導入率は32.3%と半減している(図表8)。
新入社員指導員制度を導入している、または導入予定の企業に、標準的な指導員の年齢について聞いたところ、最も多かったのは「25~29歳」(62.8%)で、2番目の「30~34歳」(20.9%)を大きく引き離している。この年齢層は22歳で入社したとして3~7年目に当たり、単独で業務をこなせる一方、新入社員からすれば、まだ話しかけやすい年齢差でもあるのだろう。
図表8 新入社員指導員制度の導入状況
(6)新入社員指導員の業務は多岐にわたる
新入社員指導員の業務
指導員が行う業務について聞いたところ、「日常的な業務指導・相談」(95.3%)が最も多いのは当然として、続いて「課題設定・支援とその評価・指導」(61.5%)、「日報・業務レポート等の作成支援と指導」(60.1%)、「上司や人材開発部門への育成状況の報告」(57.4%)などとなっており、かなり負荷が高そうな印象を受ける。3,000人以上規模では、「定期的な個別ミーティング」も72.7%と高い割合になっている(図表9)。
図表9 新入社員指導員の業務(複数回答)
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※ 詳細データは 「企業と人材」2015年5月号にて掲載しています。
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