2023年 春季労使交渉にのぞむ経営側のスタンス調査

人事

春季労使交渉にのぞむ経営側のスタンス調査
掲載している雑誌:賃金事情

8割の企業が賃上げを実施予定

ベア実施予定も前年より10ポイント増加

人事労務分野の情報機関である産労総合研究所(代表・平盛之)は、毎年、春季労使交渉に先がけて「春季労使 交渉にのぞむ経営側のスタンス調査」を実施しています。このたび2023年の調査結果がまとまりましたので、ご報 告いたします。

 

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2023年 春季労使交渉にのぞむ経営側のスタンス調査
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主なポイント

(1)2023年の賃金改定の見通し

  • 4割の企業が賃上げの世間相場を「2022年を上回る」と予測
  • 2023年に賃上げ(定期昇給含む)を実施予定の企業は8割
  • 自社の賃上げ率が「2022年を上回る」3割強、「同程度」が5割
  • 4割の企業が物価上昇分を賃金改定で考慮すると回答
  • 定昇もベアも実施予定は前回より倍増、ベア率は1.8%

(2)賃上げをめぐる経営環境

  • 仕入れコストの上昇分を「ほぼ(7~10割)価格等に転嫁できている」企業は1割強
  • 賃上げ促進税制を「活用するつもり」の大企業は2割、中小企業は1割強

(3)非正社員の雇用・賃金

  • 今後の雇用の見通しは「現状維持」が8割弱、ただし、嘱託社員は「現状維持」が6割、「増加」3割
  • 正社員と同じ仕事をしている非正社員がいる企業は52.8%、うち同一労働同一賃金の対応が完了した企業は6割

(4)最低賃金引上げの影響

  • 「非正社員の賃金に影響があり改定を行った」が5割弱、「2023年の初任給を引き上げる」が2割

(5)正社員の雇用

  • 2023年春入社予定の新卒採用は「予定あり」が88.4%。うち、「計画どおり採用できた」43.7%、「採用できたものの想定以上に内定辞退者が出た」16.5%、「採用枠に達しなかった」39.8%

 

調査要領

【調査名】  「2023 年春季労使交渉にのぞむ経営側のスタンス調査」
【調査対象】 全国上場企業と過去に本調査に回答のあった当社会員企業から任意に抽出した3,000社
【調査時期】 2022年12月
【調査方法】 郵送によるアンケート調査方式
【集計対象】 締切日までに回答のあった233社について集計

●集計企業の内訳

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調査結果の概要

(1)2023年の賃金改定の見通し

「2022年を上回る」が前回調査から23ポイント増加
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 賃上げの世間相場予測は「2022年(前年)を上回る」が41.6%で前回調査の18.5%から23.1ポイントの大幅増となった。前回半数を超えていた「2022年(前年)と同程度」は33.9%である。「2022年(前年)を下回る」は前回(11.3%)からさらに減って3.4%となった。また、「現時点ではわからない」とする企業も20.6%あった。
 企業規模別にみると、「2022年を上回る」とする企業は1,000人以上企業(以下、大企業)では57.7%と6割、300~999人企業(以下、中堅企業)で46.9%とほぼ半数だが、299人以下企業(以下、中小企業)では29.0%の3割にとどまる。


表1-1 2023年の賃上げの世間相場予測

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賃上げを実施するとした企業は8割

 自社の賃上げについて、最も多かったのが「賃上げ(定期昇給を含む、以下同じ)を実施する予定」76.8%(前回調査70.3%)で、次いで「現時点ではわからない」20.2%(同25.6%)、「賃上げは実施せず、据え置く予定」1.7%(同2.6%)、「賃下げや賃金カットを考えている」0.4%(同0.5%)であった。
 企業規模別にみると、「賃上げを実施する予定」は大企業では71.2%、中堅企業では71.6%、中小企業では84.0%と、前回調査同様に大企業よりも、中堅、中小企業で回答が多くなっている。「現時点ではわからない」と態度を保留する企業は大企業では25.0%、中堅企業で23.5%だったが、中小企業では15.0%と少ない。


表1-2 2023年の自社の賃上げ予定

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自社の賃上げ率が「2022年を上回る」とする企業は34.1%
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 2022年と比較した2023年の賃上げについて、最も多かったのは「2022年と同程度」とする企業の53.1%(前回調査70.8%)で前回調査から17.7ポイント減少、次いで多かった「2022年を上回る」企業は34.1%(同19.0%)。「上回る」との回答は前々回調査から14.3ポイント、前回調査から15.1ポイントの増加である。「2022年を下回る」企業は8.9%(同6.6%)で前回調査と同水準となっている。「同程度」が減り、「上回る」が増加した。
 規模別にみると、大企業は「上回る」が前回調査から33.2ポイント増加して48.6%と、他の規模よりも高くなっている。中堅企業も「上回る」が前回調査から18.8ポイント増加、一方、中小企業では「同程度」とする割合が60.7%と高い。


表1-3 2023年の自社の賃上げ率予測(2022年との対比)

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物価上昇分を賃金改定で考慮する企業は38.6%
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 昨年から資源高や円安傾向を背景とした物価の上昇が続いている。今回の調査では、物価上昇が賃上げに影響があるのかを聞いた。
 40年ぶりともいわれる物価上昇を2023年の賃金改定で考慮するかどうかをたずねたところ、「考慮する」は38.6%、「考慮しない」16.7%、「わからない」44.2%だった。現時点では態度を決めかねている企業も多いようだ。
 企業規模や業種の違いに大きな差はみられなかった。


 

定昇・ベア実施予定は26.4%で倍増、ベア率は1.8%
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 定期昇給制度のある企業に、2023年の賃金改定について聞いたところ、「定期昇給もベースアップも実施する予定」は26.4%(前回調査13.0%)と前回より13.4ポイント増加、平均ベア率は1.8%だった。「定期昇給のみ実 施する予定」は34.5%(同52.7%)、「現時点ではわからない」は36.0%(同32.2%)。だった。
 企業規模別にみると、「定期昇給もベースアップも実施する予定」は大企業で37.2%(ベア率1.4%)、中堅企業24.3%(ベア率2.5%)、中小企業22.6%(ベア率1.6%)である。業種別にみると、「定期昇給もベースアップも実施する予定」は製造業が非製造業を13.6ポイント上回っている。


表1-4 2023年の賃金改定について

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(2)賃上げをめぐる経営環境

コスト上昇分を価格等に転嫁できている企業は1割

 賃上げを可能とするためには、原材料などの仕入れコストを商品やサービス価格に転嫁できているどうかが重要な意味を持つ。調査結果では、「ほぼ(7~10割)転嫁できている」と答えたのはわずかに14.6%に過ぎず、「半分程度(5~7割)転嫁できている」が23.6%である。


表2-1 仕入れコストの上昇分を価格等に転嫁できているか

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賃上げ促進税制活用を予定は18.5%
グラフ

 いわゆる「賃上げ促進税制」を活用する予定かどうかをたずねた。
 最も多かったのは「わからない」62.7%、「活用するつもり」は18.5%、規模別には大企業19.2%、中堅企業22.2%、中小企業15.0%である。中堅企業で「活用するつもり」がわずかに多くなっている。「活用するつもりはない」が18.0%だった。


表2-2 賃上げ促進税制の活用

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(3)非正規の雇用・賃金

全従業員数に占める非正社員数の平均割合は23.5%、嘱託社員の増加が見込まれる

 全従業員に占める非正社員の割合は「10%未満」24.0%、「10%以上20%未満」29.8%が多く、平均割合は23.5%である。非正社員を雇用している企業における今後の雇用の見通しをみると、「パート等」「契約社員」「派遣社員」ともに「現状維持」が8割弱で最も多くなっているが、「嘱託社員」については、「増加」が32.2%と高い割合を示している。2021年の改正高年齢者雇用安定法では70歳までの就業確保措置が努力義務として課されていることから、定年後嘱託社員が増えることが見込まれていると思われる。


表3-1 非正社員雇用に対する今後の見通し

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正社員と同じ仕事の非正社員がいる企業は52.8%、うち同一労働同一賃金の対応が完了した企業は6割

 同一労働同一賃金への対応状況を聞いた。まず「正社員と同じ仕事をしている非正社員がいる」企業は52.8% (前回調査54.9%)で、「正社員と同じ仕事をしている非正社員はいない」は 45.9%(同42.1%)だった。
 正社員と同じ仕事をしている非正社員がいる企業のうち、待遇差について「見直しが完了した」とするのは60.2%で、前回調査の47.7%から12.5ポイント増加した。「見直しに着手した」は26.0%、「見直していない」は13.8%だった。
 企業規模別にみると、大企業では71.4%が「見直しが完了した」としている一方で、中小企業では26.0%が「見直していない」と回答している。


表3-2 「同一労働同一賃金」施行による対応状況

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(4)最低賃金引上げの影響

非正社員の賃金決定に「影響があった」は46.8%
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 2022年の地域別最低賃金は過去最大となる全国加重平均31円・3.3%の引上げとなった。この最低賃金の大幅引上げの影響について聞いた(複数回答)。
 「非正社員の賃金に影響があり改定を行った」46.8%、「2023年の初任給を引き上げる」が19.7%、「正社員の賃金に影響があり改定を行った」は8.2%だった。「影響はなかった」は40.8%であった。


 

(5)正社員の雇用

正社員が「増加」とする企業は4割弱
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 今後2~3年の正社員数の見通しについて聞いたところ、「増加」とする企業は38.2%(前回調査29.7%)、「現状維持」は55.4%(同55.9%)、「減少」6.4%(同13.3%)となった。企業規模別にみると、中堅、中小企業で「増加」がやや高かった。
 2023年春入社予定の新卒採用について、「採用(予定)あり」は88.4%。企業規模別にみると、大企業は94.2%、中堅企業96.3%、中小企業は79.0%だった。
 採用状況については、「計画どおり採用できた」は43.7%、「計画どおり採用できたものの想定以上に内定辞退者が出た」16.5%、「採用枠に達しなかった」39.8%であった。


表4 正社員数の今後2~3年の見通し

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※ 詳細データは「賃金事情」2023年2月5日号にて掲載しています。

 

本リリースに関する取材などのお問い合わせ

株式会社産労総合研究所「賃金事情」編集部   担当:伊関、松田
TEL 03(5860)9791   MAIL edt-a2@sanro.co.jp

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