今春に「賃上げ実施予定」は6割弱
賃上げ率の予測は6割が昨年と同程度
人事労務分野の情報機関である産労総合研究所(代表・平盛之)は、毎年、春季労使交渉に先がけ「春季労使交渉にのぞむ経営側のスタンス調査」を実施しています。2015年調査結果がまとまりましたので、ご報告いたします。
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調査結果のポイント
(1)2015年の賃上げ見通し
- 「賃上げ世間相場の予測」では、約4割の企業が「2014年と同程度」と回答
- 「自社の賃上げ実施を予定」企業は6割弱、「現時点ではわからない」も約3割
(2)2015年の自社の賃上げ予測
- 自社の賃上げ率は、「2014年と同程度」が6割、「2014年を下回る」が2割
(3)定期昇給制度の有無と今後の取扱い
- 「定期昇給制度がある」企業は全体の8割、「今後も定昇制度を維持」が増加
(4)賃金改定に向けた経営側のスタンス
- 「定昇もベアも実施する」企業は9.3%で微増、「定昇のみ実施」が5割
(5)業績が向上した場合の配分
- 「業績向上分は、「賞与に回したい」65.9%、「賃上げ(月例給の引上げ)にまわしたい」3.8%、「賃上げと賞与にバランスよく配分」21.2%
(6)2015年の年間賞与の見通し
- 年間賞与の見通しは「増加」が14.4%
(7)正社員以外の労働者の処遇改善
- 2015年に「賃金を増額する予定」が23.5%、「現時点ではわからない」が40.9%
調査要領
【調査名】 「2015年 春季労使交渉にのぞむ経営側のスタンス調査」
【調査対象】 全国1・2部上場企業と過去に本調査に回答のあった当社会員企業から任意に抽出した3,000社
【調査時期】 2014年11月中旬~12月下旬
【調査方法】 郵送によるアンケート方式
【集計対象】 締切日までに回答のあった132社について集計
調査結果の概要
(1)2015年の賃上げ見通し
「賃上げ世間相場の予測」では、約4割の企業が「2014年と同程度」と回答
本調査では、毎年、賃上げについて「世間相場の予測」と「自社の予定」をたずねている。
まず世間相場の予測については、「2014年と同程度」が39.4%(前回2013年調査34.0%)、「2014年を下回る」は大きく増えて22.7%(同2.5%)、反対に「2014年を上回る」は大幅に減少して12.9%(同47.8%)だった。なお、「現時点(2014年12月)ではわからない」と判断を保留した企業は前回の15.1%から大きく増えて25.0%となるなど、慎重な姿勢を示す企業が多くみられた(図表1)。
図表1 2015年の賃上げ世間相場の予測
「自社の賃上げ実施を予定」企業は6割弱、「現時点ではわからない」も約3割
一方、自社の賃上げに対するスタンスは、「賃上げを実施する予定」が57.6%と、前回調査(57.6%)とほぼ変わらなかった。「賃上げは実施せず、据え置く予定」と回答した企業は、前年の9.4%から7.6%にわずかに減少。一方、「現時点ではわからない」と回答した企業は前年の28.3%から増加して31.8%だった(図表2)。
図表2 2015年の自社の賃上げ予定
(2)2015年の自社の賃上げ予測
自社の賃上げ率は、「2014年と同程度」が6割、「2014年を下回る」が2割
賃上げを実施予定と回答した企業に、自社の賃上げ率を予測してもらったところ、「2014年と同程度」が64.5%と多数を占めた。これに対し、「2014年を上回る」は前年の19.6%から大きく減少して7.9%、「2014年を下回る」は同4.3%から大幅増の17.1%となった。「2014年と同程度」と回答した企業の予想賃上げ率は平均で2.1%となり、前年(1.8%)を0.3ボイント上回った。また、「2014年を上回る」と回答した企業の予想賃上げ率も2.1%、「2014年を下回る」と回答した企業は1.5%であった(図表3)。
図表3 2015年の自社の予想賃げ率
(3)定期昇給制度の有無と今後の取扱い
「定期昇給制度がある」企業は全体の8割、「今後も定昇制度を維持」が増加
定期昇給制度(以下、「定昇制度」)が「ある」と回答した企業は81.8%(前回79.9%)と微増。4年連続で増加傾向にある。規模別に「定昇制度がある」企業をみると、1,000人以上の大企業が85.7%、300〜999人の中堅企業が77.8%、299人以下の中小企業が81.5%となり、いずれの規模においても7割を超す採用率となった(図表4-1)。
今後、定昇制度をどうしていくかについてたずねると、「現状の定昇制度を維持する」が82.4%で、前回(76.4%)を6ボイント上回った。制度は維持しつつも「定昇額を縮小する」8.3%、「適用対象を限定する」2.8%は、ともに少数で、「定昇制度は廃止する」と回答した企業は1社のみであった(図表4-2)。
図表4-1 定期昇給制度の有無
図表4-2 今後の定期昇給制度の取扱い
(4)賃金改定に向けた経営側のスタンス
「定昇もベアも実施する」企業は9.3%で微増、「定昇のみ実施」が5割
定昇制度ありの企業のうち、2015年の賃金改定において「定昇もベアも実施する」とのスタンスをとる企業は9.3%(前回6.3%)と微増。「定昇のみ実施する予定」は47.2%(前回55.9%)と8.7ボイント減少しており、そのぶん、「現時点(2014年12月)ではわからない」と回答した企業41.7%(前回36.2%)が増加する結果となった(図表5-1,図表5-2)。
図表5-1 賃金改定に向けた経営側のスタンス
図表5-2 賃金改定に向けた経営側のスタンス
(5)業績が向上した場合の配分
業績向上分は、「賞与にまわしたい」65.9%、「賃上げ(月例給の引上げ)にまわしたい」3.8%、「賃上げと賞与にバランスよく配分」21.2%
2015年の賃金改定にあたり、自社の業績が向上した場合にはどのように配分するかをたずねたところ、「賞与にまわしたい」65.9%、「賃上げと賞与にバランスよく配分」21.2%、「昇進昇格の原資にまわしたい」3.0%などとなり、「賃上げ(月例給の引き上げ)にまわしたい」は3.8%だった(図表6)。
図表6 企業業績が向上した場合の配分
(6)2015年の年間賞与の見通し
年間賞与の見通しは、「増加する」が14.4%、半数を超す企業が「現時点ではわからない」と回答
2015年における年間賞与の見通しについては、「増加する」が14.4%(前回調査18.2%)、「ほぼ同額」が18.9%(同30.2%)、「減少する」12.9%(同11.3%)、「現時点(2014年12月)ではわからない」が53.0%(同38.4%)などとなった。
前回調査との対比でみれば、「現時点ではわからない」が回答企業の半数を超えるなど2014年に比べて15ボイント増加しているのが特徴的。先行きの不透明さが増している状況といえそうだ(図表7)。
図表7 2015年の年間賞与の見通し
(7)正社員以外の労働者の処遇改善
非正社員の処遇改善の見通しは、「2015年に賃金を増加する予定」が23.5%、「現時点ではわからない」が40.9%
本調査では、正社員以外の労働者(バート・アルバイト、契約社員、派遣社員、嘱託社員等。以下、「非正社員」)の賃金、手当等の改善状況についても継続的に調べている。
2014年の見直し状況をみると、「賃金を増額した」は41.7%と前回調査に比べて16.5ボイント増加した。一方、「見直していない」は16.5ボイント減少して47.0%だった。
次に2015年の見通しについてだが、「賃金を増額する予定」の企業は23.5%(前回調査15.1%)で8.4ボイントの増加。「見直す予定はない」は31.8%(同34.6%)と「現時点ではわからない」40.9%(同42.8%)がわずかに減少した(図表8)。
図表8 非正社員賃金の見直し状況と2015年の見通し
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※ 詳細データは「賃金事情」2015年2月5日号にて掲載しています。
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株式会社産労総合研究所「賃金事情」編集部 担当:伊関、黒田、境野
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