民間のシンクタンク機関である産労総合研究所(代表・平盛之)では、毎年、春季労使交渉に先がけて、「春季労使交渉にのぞむ経営側のスタンス調査」を実施し、民間企業各社の賃上げ予定、ならびに賃上げ相場の予測等について明らかにしてまいりました。2014年調査の結果について最終集計がまとまりましたので、ご報告いたします(本年1月15日付で中間集計を発表済み)。
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調査結果のポイント
(1)2014年の賃上げ見通し(最終集計)
- 「賃上げ世間相場の予測」では、約半数の企業が「2013年を上回る」と回答
- 「自社の賃上げ実施を予定」企業は6割弱、「現時点ではわからない」も3割弱
(2)2014年の自社の賃上げ率の予測
- 自社の賃上げ率は、「2013年を上回る」が2割、「同程度」が7割
(3)定期昇給制度の有無と今後の取扱い
- 「定昇制度がある」企業は全体の8割、「今後も定昇制度を維持」が増加
(4)賃金改定に向けた経営側のスタンス
- 「定昇もベアも実施する」企業は6.3%で微増、「定昇のみ実施」が過半数
(5)業績が向上した場合の配分、政府賃上げ要請の影響
- 業績向上分は、「賞与にまわしたい」69.2%、「賃上げ(月例給の引上げ)にまわしたい」1.3%、「賃上げと賞与にバランスよく配分」20.8%
- 政府からの賃上げ要請は、自社の賃金交渉に「影響しないと思う」52.2%
(6)2014年の年間賞与の見通し
- 年間賞与の見通しは「増加」が18.2%で倍増、「わからない」38.4%が最多
(7)正社員以外の労働者の処遇改善
- 非正社員の処遇改善の見通しは、「2014年に賃金を増額する予定」15.1%、「見直す予定なし」34.6%、「現時点ではわからない」42.8%
調査要領
【調査名】 「2014年 春季労使交渉にのぞむ経営側のスタンス調査」(最終集計)
【調査対象】 全国1・2部上場企業と過去に本調査に回答のあった当社会員企業から任意に抽出した3,000社
【調査時期】 2013年11~12月
【調査方法】 郵送によるアンケート方式
【集計対象】 締切日までに回答のあった159社
調査結果の概要
(1)2014年の賃上げ見通し(最終集計)
「賃上げ世間相場の予測」では、約半数の企業が「2013年を上回る」と回答
本調査では、毎年、賃上げについて「世間相場の予測」と「自社の予定」をたずねている。
まず世間相場の予測については、最終集計(159社)では、「2013年を上回る」との回答が47.8%(前回2013年調査1.3%)と大幅に増加し、次いで「2013年と同程度」が34.0%(同51.0%)、「現時点ではわからない」が15.1%(同19.4%)などとなった(図表1)。
図表1 2014年の賃上げ世間相場の予測
「自社の賃上げ実施を予定」企業は6割弱、「現時点ではわからない」も3割弱
一方、自社の賃上げに対するスタンスは、「賃上げを実施する予定」が57.9%と、前回調査(68.4%)を10.5ポイント下回っている(図表2)。
調査結果からは、「世間の動きとしての賃上げムードは理解できるが、自社のそれとは別」とのスタンスが読み取れる。本調査の回答企業は76.1%が999人以下企業であり、中堅・中小企業には依然として賃上げに慎重な姿勢があることを示す結果といえよう。
図表2 2014年の自社の賃上げ予定
(2)2014年の自社の賃上げ率の予測
自社の賃上げ率は、「2013年を上回る」が2割、「同程度」が7割
賃上げを実施予定と回答した企業に、自社の賃上げ率を予測してもらったところ、「2013年と同程度」が70.7%と最多であったものの、前回調査(86.8%)から約16ポイント下がっている。これに対し、「2013年を上回る」は約14ポイント上昇して19.6%であった(図表3)。
「2013年と同程度」と回答した企業の予想賃上げ率は平均で1.8%となり、前回(1.7%)と同程度であった。また、「2013年を上回る」、「下回る」と回答した企業の予想賃上げ率は、前回と同じで2.4%、1.4%であった。
なお、規模別にみると、1,000人以上の大企業で「上回る」が9.5%と比較的厳しい結果になっているが、大企業では、前回2013年、前々回2012年と2年続けて「上回る」が回答ゼロであったため、今回の調査結果は賃上げムードに肯定的な見方が出てきていることの現れといえそうだ。
図表3 2014年の自社の予想賃上げ率(賃上げを実施する予定の企業=100)
(3)定期昇給制度の有無と今後の取扱い
「定昇制度がある」企業は全体の8割、「今後も定昇制度を維持」が増加
定期昇給制度(以下「定昇制度」)が「ある」と回答した企業は79.9%(前回78.1%)と微増。3年連続で増加傾向にある。
規模別に「定昇制度がある」企業をみると、大企業(1,000人以上)が84.2%、中堅企業(300~999人)が80.0%、中小企業(299人以下)が77.5%となっている(図表4-1)。
今後、定昇制度をどうしていくかについてたずねると、「現状の定昇制度を維持する」が76.4%で、前回(71.1%)を約5ポイント上回っている。制度は維持しつつも「定昇額を縮小する」12.6%と、「適用対象を限定する」2.4%は、ともに前回から2~4ポイント減少。定昇制度を廃止すると回答した企業は今回はゼロだった(図表4-2)。
図表4-1 定期昇給制度の有無
図表4-2 今後の定期昇給制度の取扱い(定期昇給制度がある企業=100)
(4)賃金改定に向けた経営側のスタンス
「定昇もベアも実施する」企業は6.3%で微増、「定昇のみ実施」が過半数
定昇制度ありの企業のうち、2014年の賃金改定において、「定昇もベアも実施する」とのスタンスを採るところは6.3%(前回5.8%)とほぼ昨年並みであった。ただし、「定昇のみ実施」は55.9%(同66.1%)で前回から10ポイント減少しており、そのぶん「現時点ではわからない」36.2%(同28.1%)が8ポイント増加している。(図表5-1,5-2)。
図表5-1 賃金改定に向けた経営側のスタンス(定期昇給制度がある企業=100)
図表5-2 賃金改定に向けた経営側のスタンス(定期昇給制度がある企業=100)
(5)業績が向上した場合の配分、政府賃上げ要請の影響
業績向上分は、「賞与にまわしたい」69.2%、「賃上げ(月例給の引上げ)にまわしたい」1.3%、「賃上げと賞与にバランスよく配分」20.8%
2014年の賃金改定にあたり、自社の業績が向上した場合にはどのように配分するかをたずねたところ、「賞与にまわしたい」69.2%、「賃上げと賞与にバランスよく配分」20.8%、「昇進昇格の原資にまわしたい」2.5%などとなり、「賃上げ(月例給の引き上げ)にまわしたい」は1.3%(図表6)。
図表6 企業業績が向上した場合の配分
政府からの賃上げ要請は、自社の賃金交渉に「影響しないと思う」52.2%
デフレからの脱却と持続的な経済成長をめざす安倍政権は、昨年来、経済界に対する賃上げ要請を行ってきた。こうした政府による働きかけが自社の賃金改定にどのような影響を与えるかについてたずねてみると、「影響すると思う」25.2%、「影響しないと思う」52.2%、「わからない」22.6%となった。大企業では、「わからない」が36.8%と、4割近くに達している(図表7)。
図表7 政府から経済界への賃上げ要請の自社賃金への影響
(6)2014年の年間賞与の見通し
年間賞与の見通しは「増加する」が18.2%で倍増、「わからない」38.4%が最多
2014年における年間賞与の見通しについては、2013年に比べて「増加する」が18.2%(前回調査9.7%)、「ほぼ同額」が30.2%(同25.8%)、「減少する」11.3%(同18.7%)、「現時点(2013年12月)ではわからない」が38.4%(同45.8%)などとなった。
前回調査との対比でみれば、「増加する」が倍増し、「ほぼ同額」も若干増えたのに対し、「減少する」と「わからない」はいずれも7.4ポイント減少した。この結果からすると、調査実施時点の見通しとしては、明るさが戻りつつあるといえるだろう(図表8-1,8-2)。
図表8ー1 2014年の年間賞与の見通し
図表8-2 2014年の年間賞与の見通し
(7)正社員以外の労働者の処遇改善
非正社員の処遇改善の見通しは、「2014年に賃金を増額する予定」15.1%、
「見直す予定なし」34.6%、「現時点ではわからない」42.8%
本調査では、正社員以外の労働者(パート・アルバイト、契約社員、派遣社員、嘱託社員等。以下、「非正社員」)の賃金、手当等の改善状況についても継続的に調べている。
まず、2013年の実績については、「見直していない」が63.5%(前回61.9%)、「賃金を増額した」は25.2%(同29.0%)。「増額した」企業は3年ぶりに減少に転じた(図表9-1)。
次に、2014年の見通しについてだが、「賃金を増額する予定」の企業は15.1%(同16.8%)で4年ぶりに減少した。ただ、「見直す予定はない」も34.6%(同43.9%)と約9ポイント減少しており、そのぶん「現時点(2013年12月)ではわからない」42.8%(同34.8%)が増えている。年明け後も、まだ様子見の企業が多いと思われるが、非正社員の処遇についても積極的な交渉を期待したい(図表9-2,9-3)。
図表9-1 非正社員賃金の見直し状況
図表9-2 非正社員賃金の2014年の見通し
図表9-3 非正社員賃金の見直し状況と2014年の見通し
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※ 詳細データは「賃金事情」2014年2月5日号にて掲載しています。
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