人事労務分野の情報機関である産労総合研究所(代表・平盛之)は、このたび「2021年度モデル賃金・モデル年間賃金の実態」を実施しました。このほど、その2021年度調査の結果がまとまったので、掲載されている「賃金事情」2021年10月20号と11月5日号より一部を紹介します。
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主なポイント
(1)2021年度モデル賃金
- 2021年度の年齢ポイント別にみたモデル所定内賃金は,大学卒・総合職が35歳,340,375円,45歳453,569円,55歳528,074円,高校卒・総合職が35歳307,987円,45歳399,393円,55歳469,344円などとなっている。
(2)2021年度モデル年間賃金
- 2021年度の年齢ポイント別にみたモデル年間賃金は,大学卒・総合職では35歳,551.1万円(賞与・一時金比率26.0%),45歳740.8万円(同26.3%),55歳884.0万円(同27.2%),高校卒・総合職が35歳481.1万円(同23.2%),45歳635.8万円(同24.1%),55歳751.7万円(24.7%)などとなっている。
(3)管理職・非管理職別のモデル賃金と役職者賃金
- 管理職と非管理職モデルの格差は55歳で1.30倍。役割給は23.7%の企業で導入。
(4)【付帯調査】正社員と非正規社員の諸手当
- 契約社員がいる企業における各種手当の導入率は,役付手当が正社員68.0%に対し契約社員13.8%。以下同様に,交代手当が23.3%に対し19.1%,家族手当が81.6%に対し28.7%,住宅手当が52.4%に対し16.0%,通勤手当が97.1%に対し91.5%などとなっている。
調査要領
調査結果ハイライト
(1)2021年度 モデル賃金
モデル賃金上昇率は1%以下で低調,ベースアップ実施企業は30.1%となった。
図1 年齢ポイント別にみたモデル賃金の金額と対前年上昇率(大学卒・総合職)
表1 集計企業における2021年賃上げ状況
表2 全年齢記入企業における大学卒・総合職のモデル賃金(全産業・調査計)
表3 役職関係の手当等の平均支給額
表4 家族手当制度の有無と平均支給額
表5 家族手当の支給条件
(2)2021年度モデル年間賃金
「2021年度モデル年間賃金」は,「2021年度モデル賃金」×12カ月+「2020年年末賞与・一時金」+「2021年夏季賞与・一時金」で集計したものである。なお,モデル年間賃金の算定のベースとなるモデル賃金は,賞与・一時金にも回答があった企業のみで集計したものである。
表6 モデル年間賃金と賞与比率,月数
(3)管理職・非管理職別のモデル賃金と役職者賃金
この調査では,モデル賃金表の記入時に対象となる労働者が組合員(もしくは非管理職)なのか,全従業員(管理職を含む)なのかを回答してもらっている。ここで紹介する集計は,“全従業員で設定”している回答を「管理職モデル」,“組合員で設定”している回答を「非管理職モデル」としてとらえたものである。つまり,「管理職モデル」とは,学校卒業後ただちに入社し,管理職まで標準的に昇進・昇格した人の賃金であり,「非管理職モデル」とは労働組合員を対象としたもので,管理職を含まない賃金である。なお,ここでは35歳以上について紹介している。
図2 管理職・非管理職別にみた年齢別所定内賃金の格差
図3 役職者の賃金分布(実在者・所定内賃金)
(4)【付帯調査】 正社員と非正規社員の諸手当
正社員では,家族手当84.0%,役付手当71.6%,住宅手当50.0%
正社員では,在宅勤務手当は全体では7.4%,1,000人以上規模では17.2%
非正規社員への支給は,交替手当,食事手当,通勤手当などが多い
表7 非正規社員のいる企業割合
図4 諸手当の導入状況(正社員上位5項目)
図5 契約社員がいると回答した企業の契約社員への手当の導入状況(正社員の導入率が高い10手当)
モデル賃金とは
モデル賃金とは,一定のモデル条件に該当する労働者の賃金である。モデル条件は,「最短年数で進学し,学校卒業後すぐに入社し,引き続き同じ企業に勤続している者」をまず第一に,年齢,勤続,学歴,扶養家族,職種などが加えられる。これらの条件は,依然として年功賃金の性格が残るわが国において,重要な賃金決定要因であり,それぞれの条件に合致する者の賃金カーブは,その企業の賃金格差構造の骨格をなしている。これを調査することによって,一企業における賃金格差構造や,同一条件のもとでの他社との賃金比較が可能となる。
また,モデル賃金は新規学卒者の初任給とその後の標準的な昇給状況を示すデータとしても有用である。
◆モデル賃金の算定方法◆
モデル賃金の算定方法には,①理論モデル,②実在者モデル,③その他,両者の併用等,の種類がある。
① 理論モデル:モデル条件にあった賃金を賃金表から読み取ったもの。
② 実在者モデル:モデル条件にあった実在者を順次選び出し,それらの賃金を読み取ったもの。該当する実在者がいない時は,前後の賃金から想定する。
理論モデルは,その企業の基本的なカーブをみるには有意義だが,必ずしも実在者がその賃金カーブ上にあるとはいえず,傾向としては,理論モデルは実在者モデルよりも高めになる。また,賃金表や昇格基準などが整備されていないため,理論モデルを試算できない企業も多い。
実在者モデルの場合は,実在者のなかで誰を標準者とするか,実在者がいない年齢ポイントをどうするか,という問題が生じうる。
本調査の集計結果には,上記①~③のケースが混在している。2021年度調査における回答企業のモデル賃金算定方法の内訳は,別表2 のとおりである。
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※ 詳細データは「賃金事情」2021年10月20号と11月5日号にて掲載しています。
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