【5月号誌面からWEB掲載】産業カウンセラーに聞く 在宅勤務における留意点
日本テレワーク協会

人事実務

人事実務 2020年5月号

 人事実務編集部では、新型コロナウイルスの感染拡大により急速に導入が進んでいる在宅勤務における留意点等について、日本産業カウンセラー協会に寄稿していただきました。とくに、従業員の心と体の健康を維持するために人事としてできること、知っておくべきことは何なのか、従業員からの相談等にどう接していくか、参考になる情報です。

 

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1 在宅勤務について人事の方へ
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突然の在宅勤務実施で戸惑いつつ奮闘していらっしゃるかと思います。社員の方にお伝えいただきたいこと、留意していただきたいことについて以下のようにまとめました。

1.在宅勤務の就業規則、運用のルールを明確に伝えること
(1)就業時間を明確にする。たとえば、9時~17時、昼食休憩1時間など。
(2)業務内容を明確にすること。具体的には、社員本人が在宅でできること、職場でないとできないことを分けて上司に報告する。上司は報告を受け、相談に乗り確認すること。

2. 会社や関連部署と連絡がとれる体制を整えておくこと
具体的には、電話やメール、スカイプ、WEB会議システム等の利用方法の確認をすること。

3.1日の業務内容を終業時等に上司に報告すること
上司や同僚と相談の上、連絡方法や時間等を確認すること。報告、連絡、相談が特に大切になることを伝える。

4.コミュニケーションをとる工夫をすること
在宅での独り仕事は集中力が落ちたり孤独を感じたりしがちです。職場の人同士でコミュニケーションをとる工夫をすることが大切。チャット機能や電話、メール、会議システムなどで、いまの状況や気持ちなどを話したり聞いたりする機会を持てるようにする。

5.体を動かすこと
動くことが少なく不健康になりがちなので、努めて体を動かす、運動をするよう働きかけること。  
例)・深呼吸や背筋を伸ばす、立って手足を動かす、ストレッチやラジオ体操などをする。
  ・終業後は外で散歩やジョギングなどをする。歩いたり運動したりする

6.疲れやすかったり仕事が進まないときは気分転換や気晴らしをすること
例)・好きなことをする。音楽を聴く、歌う、お茶を楽しむ、花を眺める、アロマを香る、好きな場所にいるとイメージするなど。
人事の方としては業務をどのように行っているか実情が見えないことで不安になったり確認したくなったりすると思います。社員を信頼して、在宅勤務に慣れて実績があがるよう支援できることは何か相談してもらう、困っていることなどお聴きする態度・姿勢をお願いしたいと思います。
 
(日本産業カウンセラー協会  伊藤とく美)
 

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2 自己管理は危険
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商品企画・開発関連の研究所の健康管理室カウンセラーより

 新型コロナウイルスによる問題が起こる前から、働き方改革で言うところの研究開発業務従事労働者、高度プロフェッショナル制度適用者にあたる方々は、リモートワーク、在宅勤務を行ってきています。その対象者が一様に言われることは「話しかけられたり、邪魔がないから集中できる」です。
 
 リモートワーク等を行っていなかったころは、事業場に人の少ない土日に出社したりして、集中できる環境を求めて仕事をしていたそうです。彼らは、リモートワークは「通勤に時間をとられない」「疲れないからあまり寝なくてもよくなった」と話します。
 
 好きな仕事に集中できる――これは好きな遊びに夢中になっている子どもとおなじ状態といえます。能力も高く、生き生きと仕事をされているように見えるけれど、気が付かない疲労はたまっているのではないでしょうか? 返ってくる言葉は「私はそんなにヤワではありません」。メンタルヘルスセルフケア研修を行っても、どこ吹く風で働き過ぎてしまう人達に、自己申告、野放しは危険、労務管理が必要です。 
 
 先日、年次の浅い若い方、新人対象にしたメンタルヘルス基礎知識研修をしました。実験などで手を動かす人は出社していて会場には数人集まりましたが、あとは在宅なので、Skypeを使いました。
 研修後、在宅の方から、研修のお礼のメールをもらいました。
 
 「自分の生活を見直す機会になりました。単独での長時間の仕事は、気力の維持、衰え、ストレスにつながると気がつきました。また、研修で紹介していただいたいくつかのストレスコーピングのやり方は、自分に合うものを実行してみたいと思いました。不安は一人で抱えなくていいんですね」
 
 との感想をいただき、何だか安心しました。オンラインの研修でしたが、ある程度伝わったようです。
 講義をする産業カウンセラーは、マスク越しで顔が見えないので、伝わっているのか不安があり、声を張っていたのでしょう。いつもより疲れる研修でした。
 
(シニア産業カウンセラー 呉葉子)
 

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3 日本産業カウンセラー協会ホームページより
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日本産業カウンセラー協会では、ホームページ上に「新型コロナウイルスによる不安やストレスなどの心の問題に対処するために」というコーナーを設けて、職場や家族とのコミュニケーション、テレワークでの留意点などについて掲載しています。
現下の状況においては、通常のとき以上にコミュニケーションへの気配りが必要になり、傾聴や安心感・信頼感などが重要になります。以下のテーマでの記事が掲載されていますので、ご覧ください。
 
◆新型コロナウイルスの対応に疲れないために
◆ストレス予防の観点からのコロナウイルス予防と対処法
◆自分の心の健康を守るため、新型コロナウイルスとどうつきあうか?
◆3.11被災者支援活動担当の産業カウンセラーがコロナ禍で思うこと
◆新型コロナウイルス感染症対応―職場や家族とのコミュニケーション、傾聴を大切に
◆新型コロナウイルス感染症対応―テレワーク(在宅勤務)取り組みの留意点
 
日本産業カウンセラー協会
「新型コロナウイルスによる不安やストレスなどの心の問題に対処するために」

 

(公開日:2020年5月19日)



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