新型コロナウイルスの感染拡大を契機に、在宅勤務が急激に進んでいます。人事実務編集部では、現在生じている課題や長期的に取り組むべきことについて、一般社団法人日本テレワーク協会専務理事の田宮一夫氏と、株式会社ダンクソフト代表取締役の星野晃一郎氏に伺いました。具体的な対応策等は、6月号掲載に向けてさらに詳しくお伺いしていきますが、今号では、当面でてきている課題について4月初旬にテレワーク会議システムを利用して伺ったことをもとに、編集部でまとめた内容を紹介します。
まず、テレワークは「在宅勤務・モバイルワーク・サテライトオフィス勤務」の3つにわけられますが、今回は「在宅勤務」に限ったかたちでの運用が拡大していることから、これまで行われてきた「テレワークの推進」をそのままあてはめることができない点に、注意が必要とのこと。
そのうえで、新型コロナウイルスの感染拡大により、十分な準備が整わないまま在宅勤務を実施することで多くの課題が出てきているとのことです。
たとえば、
・ 集中できる環境で仕事をして、働きすぎてしまう
・ 小さい子どもがいたり介護している家族がいたりする社員は、仕事中に「中抜け」がどうしても生じてしまう。
・ モバイル端末の利用、ルーター借用、回線使用料など、社員個人の経費負担が生じる。
・ 一人で仕事をすることによる孤独感などから、メンタルに支障がでてくる。
・ 在宅勤務を支援する内容の助成金については、申請の煩雑さがある。
・ 在宅勤務に必要なモノ(パソコン等)の供給が、需要に追い付かない懸念がある。
などが挙げられました。
これらの問題は、「働く環境の見える化ができていない」ということから生じるものが多く、中長期的には、ツールの導入やマネジメントの改革・教育等により、テレワークができる環境を整えていくことが望まれます。しかし、急きょ在宅勤務を導入する際、最低限、チェックしておかなければならないことがあります。
・ その仕事は、在宅でできるのか?
〔機密事項を扱うか? 現場にいる必要があるか(店舗・工場など)?〕
・ なぜ、出社しなければいけないのか?
〔電話に出る必要がある?郵便物がある?ハンコを押さないといけない?役所に届け出をしないといけない?〕
・在宅勤務中の社員のマネジメントは可能か?
などです。
では、人事部門は、何をどう判断すればいいのでしょうか?いま、何を優先するべきなのでしょうか?
・社員の健康を守ること。
・社員の生活(経済面)を守ること。
・社員の労働時間を管理すること。
・事業を継続させること。
などが考えられますが、感染拡大の状況など社会環境に加え、自社の置かれた状況、社員の状況等に応じて、適宜判断していくことが必要です。
在宅勤務については、さまざまなやり方があるなか、日本テレワーク協会のホームページ(https://japan-telework.or.jp/)では、テレワーク緊急導入支援プログラム等を掲載しています。
また、メンタル面での対応等、『人事実務(2020年5月号72~73ページ)』に日本産業カウンセラー協会の情報も掲載しています。「産業カウンセラーに聞く、在宅勤務における留意点」として、人事実務Facebookで先行公開されていますので、あわせてご確認ください。
(文責・編集部 4月2日オンライン取材にて)