インタビュー
「雑誌 × web」クロスインタビュー
Interview 2
〜寺崎人財総合研究所 代表取締役社長 プリンシパルコンサルタント 寺崎文勝〜
- Episode 1 「人事の知識だけ知っている」ってポジションは、実はそれ単体ではちょっと厳しい。
- Episode 2 自分って結構儲け話が好きだなって気づいたんです。多分コンサルタントに向いてたんだと思います。
- Episode 3 コンサルタントをやればやるほど、ある程度収斂されてだんだんつまらなくなってしまう。それはもうコンサルティングの宿命ですね。
- Episode 4 君たちどうするんだ、みたいな話を人事の人たちとしたいですね。
- Episode 5 ジョブを前提として人材育成を強化していく、その一環として、人事スタッフの開発も考えていきましょうね、ぐらいに考えるといいのかもしれません。
- Episode 6 人事部門や人事パーソンが、大切にしなくてはならないことは二つです。ビジネスゴールと人の幸せ(笑)。
Episode6
人事のカバー領域はどんどん広がってる
編集部
ずーっと人事のあり方について語っていただいて、今更というか、だからこそお聞きしたいんですが、寺崎さんは人事ってなんだと思われますか?
寺崎氏
やっぱり第一義的には「ビジネスゴールの達成に貢献する」これが全てですよね。人という経営資源をどういうふうに活用すればその会社のビジネスゴールが達成できるのか。それが全てです。
全てではありますが、そこはそうは言っても、人という経営資源って自分の意志を持っている。だから会社のビジネスゴールと、働く人たちの人生のゴールをどういうふうにフィッティングさせていくかというのが、今の時代、特に難しいところです。
最近はよく、会社のパーパスと働く一人ひとりのパーパスを合致させましょうって話が出てきていますよね。それだけだとちょっと表層的かもしれないけど、効率的だとは思いますね。
サステナブルというのは、人事マネジメントによっても非常に重要なんです。単純な話、1年2年ぐらいの短期的なパフォーマンスを上げるなら、それこそプロジェクト達成ですごいボーナスが出るとか、カンフル剤みたいなものを用意すればなんとかなるんだけど、5年10年20年のスパンで、会社に貢献し続けてくれるよねっていうことを考えるのであれば、人生のゴールパーパスみたいなものを重視しないといけない。
つまり人事部門や人事パーソンが、大切にしなくてはならないことはその二つです。ビジネスゴールと人の幸せ(笑)。
「一生懸命働いて、死ぬまで働いて、結果を出したら出世できるよ、家の大黒柱として頑張ってね」ではなくなりましたからね。そういう意味では最初の話に出てきた「変わったこと」って、その辺りかもしれません。
編集部
そうなると人事のカバーしなきゃいけない領域ってますます広くなってませんか?
寺崎氏
そうですよ。例えばダイバーシティの話って、別にジェンダーとかの話じゃないわけですよね。誰もがいろんな価値観を持っている。そして、人が気持ちよく働いて会社組織に貢献できる、っていうのがダイバーシティの本質で、結果として女性だろうが若手だろうが高齢者だろうが気持ち良く組織に貢献できてパフォーマンス上がるなら、ダイバーシティなんですよね。
「興味」が原動力になる
編集部
人事の仕事に携わってきたわけですけれど、寺崎さんの思う、人事の魅力ってなんでしょうか。
寺崎氏
魅力……うーん、ないですね(キッパリ)。多分僕が社会人として職業人生を歩む中で、コンサルタントって仕事が一番高いパフォーマンスを上げられる領域だったってそれだけ(笑)。
それだけなんだけど、一つ言えるとしたら「魅力」ではなくて「興味」があったんです。「人事に魅力がない」というわけではなくて、仕事するのが嫌いなんで、そりゃ仕事目線で見たら魅力的に思えない(笑)。
ただ、僕は元々大学で心理学を専攻していたので、人に対する興味、「この人は何考えて、今ここにいるの」とか、「どうすればこの人は動くのか」みたいなところに興味があったんです。
人事の実務っていうのは、人を相手にする仕事なので、仮説と検証の繰り返しなんですよね。「この評価制度を入れたら、人はどういうふうに動くのか」みたいな。そこが、さっきの「人に興味がある」とつながるわけで、この仕事をずっと続けているんです(笑)。
なので、本当に人が好きな人は教育系か人材紹介系のコンサルになるんですよ、きっと(笑)。
ちなみに心理学も結構分かれていて、カウンセリングなどの臨床心理の方は、人を個人として見るんですよね。個々人の人と向き合う。
僕は実験的な心理学の方なので、人を個人として見てないんですよね。少なくとも人事の仕事をしていても、集合体、一般化されたものとして見てるわけです。
ここが滞っているから直そうとか、でもうまくいかなかったら別の仮説を作るかということで人事制度を改定したりする。そこは面白いですね。
うん。なので、ちょっと無理やりこじつけたみたいだけど、僕にとっての人事の魅力というのは、「人って面白いね」というところですね(笑)。
編集部
ちょっと脱線しますが、寺崎さん、野球がすごくお好きじゃないですか。その理由も、人への興味というかチームとして動いていく。作戦の妙とか、あるいは次はどんな球を投げるかみたいなそういう駆け引きみたいなところからきているんですか?
寺崎氏
このキャッチャーだったら絶対あそこは要求してこないだろう、みたいな話は面白いですよね。でも、もっと単純で、エンターテイメントだから好きなだけです(笑)
編集部
余談ついでにこの際だから伺いたいんですが、野球もですが京都がすごくお好きですよね。なぜそんなに京都が好きなんですか? もう1年の何割京都にいるんですか、というぐらい滞在していらっしゃるじゃないですか。
寺崎氏
これも単純で、基本的に神社仏閣とか、お庭とか好きなんですよ。しかも京都っていうのはあの狭いところに歴史も食文化も宗教もいろんなものが重層的に重なっているので本当に面白い。
いつ行っても満喫できるっていうか浅くないですよね。だから2泊3日レベルじゃ駄目で、
本当に1ヶ月ぐらいホテルに滞在して、次はこの通り、その次はこっちと回って歩くぐらいのことをしないとわからない。なんでこんなところに仁丹の昔の看板がたくさんあるんだろうとかね(笑)。フラッと行った神社がたまたまお祭りやっていて、地元のおばあちゃんかにそこの歴史の話を聞いたりとか、本当に面白いです。
編集部
好きこそものの上手なりと言いますけれど、興味を持つってすごく大事ですね。だからこそ、いろんなものを観察して、それが仕事にも活きてくる。本当に実感しました。
今日はありがとうございました。
寺崎氏
はい。ありがとうございました。あ、それでちょっとお願いなんですが、このあと、球場に観戦に行くので、ちょっと準備するのにこの部屋を使わせてもらえるとありがたいなと。
編集部
(笑)。もちろん大丈夫です。
野球で締めるとはオチも完璧ですね(笑)。ありがとうございました。
(2022年9月13日収録)