インタビュー
「雑誌 × web」クロスインタビュー
Interview 2
〜寺崎人財総合研究所 代表取締役社長 プリンシパルコンサルタント 寺崎文勝〜
- Episode 1 「人事の知識だけ知っている」ってポジションは、実はそれ単体ではちょっと厳しい。
- Episode 2 自分って結構儲け話が好きだなって気づいたんです。多分コンサルタントに向いてたんだと思います。
- Episode 3 コンサルタントをやればやるほど、ある程度収斂されてだんだんつまらなくなってしまう。それはもうコンサルティングの宿命ですね。
- Episode 4 君たちどうするんだ、みたいな話を人事の人たちとしたいですね。
- Episode 5 ジョブを前提として人材育成を強化していく、その一環として、人事スタッフの開発も考えていきましょうね、ぐらいに考えるといいのかもしれません。
- Episode 6 人事部門や人事パーソンが、大切にしなくてはならないことは二つです。ビジネスゴールと人の幸せ(笑)。
Episode4
人事スタッフのキャリアは迷子になりがち
寺崎氏
むしろね、読者の人たちにいろいろガンガン言いたいですね。
編集部
というと、どんな話でしょう?
寺崎氏
君たちどうするんだ、みたいな話を人事の人たちとしたいですね。
スタートアップのCFOを対象にしたCFO育成講座みたいなところで、人事マネジメントのコマを担当しているんですが、やっぱり「間接スタッフとしてキャリアを積んでいく」っていうところで、ジョブ型がまだ根付いてない日本だからこそ、「自分がどんなキャリアを積んで形成していけばいいか」につまずいている人って結構いるなって思うんですね。
人事の人にしても、結局自分がBPなのかCoEなのか、はたまたOpEx(オペレーショナル・エクセレンス。業務プロセスの改善や変革などを担う、オペレーションを担当する役割)なのかっていうのがぼんやりしていたり、そもそも今は人事の仕事をしてるけれど、将来自分はどんなキャリアを積めばいいのか、そこで迷子になっていることが結構多いんです。
まさしく今回の記事もそういうお話だったので、楽しかったんですが、もう少し踏み込んだほうが良かったり、書ききれなかったこともあったかな。
編集部
でしたら、どうせだからこの場で話しちゃってください(笑)
寺崎氏
いやいや、言いたいことは大体全部盛り込んだんです(笑) でももう少し話しますね(笑)。
補足的な話をすると、この先まず一番危ういのはOpExの人ですよね。定型かそれに近い業務というのは、テクノロジーや外部のサービスに全部置き換えが利くような仕事なんで、これらをやっている人たちが多分一番将来的なキャリアがない。給与計算を直接やっている人事って減ってきているでしょう?
勤怠データなんかも、もうほぼ自動的に読み込んでくれるので、システムが給与計算をしてくれる。社会保険や税金の届け出なんてのも、昔は一生懸命、損保とか生保の保険料を突き合わせて、ダブルチェックかけて年末調整終わりました、なんて世界があったわけですよ。終わったら終わったで、給与明細にくっつけてみんなに配って回ってましたよね。でも今は社内メールで一斉送信できちゃう。
なので、OpExで最後まで残れる人っていうのは、自分の仕事をなくせる人なんですよ。
テクノロジーや業務プロセス改革をして、自分の仕事をどんどんなくすことができる人は、その実績を持って、「私があなたの会社の生産性をバリバリ高めます」と、他の会社に転職できる。
そこまで割り切って、自分はそういう事務屋をやるんだっていうんだったら、僕は全然いいと思う。もっと言えば、人事でそれができるんだったら、他の領域の業務でも同じことができるんです。
編集部
それはもしかしたら業務プロセス改革のコンサルタントいうことになるのかもしれないですね。まさしく効率化ですよね。
寺崎氏
そうなんですよ。「業務を一生懸命回してます!」だけでは駄目なわけですよね。
最近は、人事の専門家になりたい、スペシャリストになりたいって結構多いんですけれど、やっぱりさっき言ったように、同じ会社にずっといると厳しい。
これもコンサルの話に置き換えると、人事コンサルタントで駄目な人っていうのは、前職の人事でインプットした「自分の持っていた会社の経験則しか語れない」人。そういう人事コンサルタント結構いるんですよ。「あなたがいた会社ではそうだったかもしれないけど……」ってなっちゃう。
ですので、本当の意味でCoEの役割を果たす人事をしたいのであれば、早い段階でいろんな会社で経験積むか、コンサルタントになるのが手っ取り早いかなと思います。
編集部
それは転職してどんどん経験を積みましょう、というある意味単純な話なんでしょうか。
寺崎氏
記事でも触れましたが、「BPになる」っていうことを考えたら、どっちかというと人事の専門性よりも、会社のビジネスゴールや事業部門の計画達成のためには、どうすればいいのかという、ビジネスセンスの方が大事で、そのセンスを持ってない人は厳しいですよね。
だけど、人事の人って、人のことが好きで本人もいい人が多いんですよね。「この人にどういう風になってもらおうかな」とか、すごく人のことが好き。そういう人って大体、人材開発や人材紹介のコンサルタントになるんですよ。一人ひとりの成長だとか、適材適所・適職をとか、そっちに行っちゃうんですね。
僕は制度系のコンサルなんで、基本的にはその人の人生なんてあまり考えないわけです。「どんな仕組みを作ったらこの会社のやりたいことを達成できるのか」という仕組みを作るのが制度系のコンサルの仕事なので、BPって「人が好きだよ」っていうよりは、「お金が好きだよ」っていう人の方が向いているんです。
もちろん人情が一切ないという話ではなくて(笑)、ビジネスゴールを達成するのと同時に、一人ひとりがどれだけハッピーになれるかっていうバランスをいかに取れるか、というところも気にしていますけれどね。
特に今の時代っていうのは、残業して出世して残業代も稼いでみたいな時代ではないので、それぞれの生きがいややりがいという、多様性を見ていかなきゃいけない。
でもやっぱりBPって、金稼げてなんぼかな(笑)。