インタビュー
「雑誌 × web」クロスインタビュー
Interview 2
〜寺崎人財総合研究所 代表取締役社長 プリンシパルコンサルタント 寺崎文勝〜
- Episode 1 「人事の知識だけ知っている」ってポジションは、実はそれ単体ではちょっと厳しい。
- Episode 2 自分って結構儲け話が好きだなって気づいたんです。多分コンサルタントに向いてたんだと思います。
- Episode 3 コンサルタントをやればやるほど、ある程度収斂されてだんだんつまらなくなってしまう。それはもうコンサルティングの宿命ですね。
- Episode 4 君たちどうするんだ、みたいな話を人事の人たちとしたいですね。
- Episode 5 ジョブを前提として人材育成を強化していく、その一環として、人事スタッフの開発も考えていきましょうね、ぐらいに考えるといいのかもしれません。
- Episode 6 人事部門や人事パーソンが、大切にしなくてはならないことは二つです。ビジネスゴールと人の幸せ(笑)。
Episode1
経営やビジネスの方向に向けて人事の仕組みをフィッティングさせていくお手伝い
編集部
人事の地図の10月号は「人事の仕事ってなんだろう?」というテーマを組んだのですが、役割・スキル・キャリアと追いかけていったところで、「そういえば、人材開発担当者の育成ってどうすればいいんだろうね?」と疑問が出てきまして。
そこを補完したくて、寺崎さんに寄稿いただいたんですが、まず最初にきっちりと人事部門の役割というのを俯瞰して整理していただいたんですよね。これがこちらの意図以上に特集を外から補完する形になりまして、もうありがたい限りでした。
というわけで、弊社では、セミナーで講演していただいたり、姉妹誌で執筆をいただいたりと、いろいろご協力いただいておりますが、今回は「人事の地図」に寄稿いただいたのでちょうどいいタイミングということで、寺崎さんご本人に迫るインタビューを企画させていただきました。よろしくお願いいたします。
寺崎氏
はい、よろしくお願いします。
編集部
それではいきなり基本的な所を聞くのですが、寺崎さんっていわゆるコンサルタントをされてるわけですよね。そもそもコンサルタントって何をやっている人なんでしょうか。コンサルタントって、人によって結構勝手にイメージがついていたりするじゃないですか。
寺崎氏
仰る通り、人事コンサルタントをしていますが、僕の仕事って業界内では制度系のコンサルタントって言われてます。人事制度のコンサルティングなので、報酬とか評価、人材育成や人材開発がフィールドになります。
今回の寄稿の中で言うと、CoEとBPを兼ねた役回りの人を外から支えるのが、制度系のコンサルタントの役割なのかなって思っています。
※CoE(Center of Excellence:中核的研究拠点。ここでは高度専門機能=スペシャリスト集団というニュアンス)。記事では間接部門/スタッフの機能・役割は、OpEx、CoE、BPの3つに集約されると解説しており、CoEは人事マネジメント領域の知見や経験知に基づき、経営者やBPと一体になって人事施策の設計やソリューションの提供を行う役割と紹介していた。
※BP(Business Partner)。経営者や事業/部門責任者の戦略的パートナーとして全社/事業/部門目標=ビジネスゴール達成のための戦略の立案・実行を担う役割。昨今はHRBPと呼ばれるのことが一般化しつつある。
寺崎氏
経営者と話をしたり、ビジネス部門のトップと話をして、そもそもどういう方向で経営やビジネスを考えてるのかをインタビューし、その方向に向けて人事の仕組みをフィッティングさせていくお手伝いするのが僕の仕事です。
当然のことながら、それぞれの会社ごとのビジネスの違いを把握して、そのゴールをちゃんと実現する道筋が見えてなきゃいけないので、人事以外の経営全般にわたる知見も当然持った上で、人事領域に特化しているのが人事コンサルタントです。
……とそんなふうに思ってもらえるといいのかな(笑)。
人事の知識だけじゃダメ
編集部
「人事のことなら何でも知ってるよ!」だけじゃダメってことですか?
寺崎氏
はい、経営者と一緒に経営目線を持った上で人事の話ってものを入れていかないと、人事の仕組みだけ何かこう、浮いてしまって全く意味がありません。
そのためにはその会社の事業内容だとか、経営計画、ビジョンなどを具体化するためにはどのような仕組みがいいのか、一緒になって考えていくっていうのもあるので、ただ「CoEのことはわかってます」だけでは務まらない。
編集部
そもそも業種によって全然ビジネスモデル違いますものね。
寺崎氏
そうです。業界や業種ごとに、ある程度ビジネスモデルや儲かる仕組み、オペレーションの仕組みといったところも頭の中に入れておかないと、外部コンサルタントというのはできない。
編集部
大変な仕事ですよね。正直コンサルって、ピンからキリまでみたいなことをよく言われますけど、今お話しされたように、クライアント企業の中にどこまで入っていけたか、というのが、結果や評価にダイレクトに反映されちゃってるんでしょうね。
寺崎氏
そうですね。ですから、知識を切り売りしているだけのコンサルタントも結構いるわけですよ。例えば「職務評価のリストを作って持っています、コンピテンシーモデルを作ります」だとか。
でも、それってただの仕組みであって、それが本当にその会社において価値があるのか、ビジネスゴールに結びついていくのかというところも、ちゃんと導いてあげないといけない。
記事の話に紐付けると、「人事の知識だけ知っているCoEです」ってポジションは、実はそれ単体ではちょっと厳しくて、本当はBPとCoEで1セットなんです。だから、キャリアの上でそれを両立させることを考えておかなくちゃいけないと思います。
CoEなんだけれどBPのこともちゃんとわかるよっていう立ち位置か、あるいは基本BPなんだけれど、人事の主要な知識も持ってるよという形か。
どちらが仕事の主軸なのかは違うにしても、どちらの軸の話もできますっていうのがコンサルタントとしてはベストだと思いますし、もちろん内部の人事スタッフとしても全く一緒の話なんですね。
編集部
100%全部を理解してなくてもいいですけれど、最低限対話ができる素養がないと、話が通じないですよね。
寺崎氏
そうですね、最終的に目指すところは内部スタッフも同じです。逆にいうと、極めればコンサルタントとして外部からお客さんを支えることも当然できるわけです。
ですから、この2つの領域でパフォーマンスを上げることができれば、「会社の現場の人事と戦略的人事スタッフとしても一流、外部のコンサルタントとしても一流の人材になるんだ」というキャリアの道筋があると理解してもらった方が、人事担当、コンサルタント、どの道を選ぶにしてもキャリアを考える上では有用なんじゃないかと思います。