指導担当者が注意すべきこと
1. メールで済ませず、3回以上の対話をする
隣の席にいるのに、新入社員が何でもメールだけで知らせてくることがあります。特別な理由がない限り、意識的に顔を合わせて話すことをお勧めします。
そのときのやり取りは3回以上させること。「今日の調子はどうだい?」、「まあまあです」、「まあまあ……か。最高に調子のよい時を100として今はいくつ?」、「85点くらいかな……」といった具合です。併せて、体調や悩みがないかも観察しましょう。
2. ミスを繰り返すときは、質問のスキルを使って検証する
失敗は新入社員の特権ではありますが、同じ間違いを繰り返したり、ケアレスミスが多くなったりすることがあります。大切なのは本人に考えさせること。失敗を次の成功に結び付けるためにも、「なぜ起きたのかな?」、「ミスを防ぐために何が考えられる?」、「他に何かある?」など、ここは大いに質問のスキルを活用しましょう。
3. 褒めてばかりでは育たない。時には叱る
怒ると叱るは違います。あなたの感情のままに「なぜこんなことをしたんだ」、「前にも言ったはずだよ」を繰り返しても互いの利益になりません。仕事の進め方や考え方、お客さまへの対応などで許されない行動があれば、そのときは遠慮はいりません。「これはダメだ」ということをはっきり伝えます。何が起きたのか、その状況を本人に説明させて、なぜ許されないのか、この結果が何を招くのかも具体例を使ってはっきり伝えます。
4. 新人が何も質問してこないのは、分かっているからではない
「聞きたいことや教えてほしいことはあるが、周囲の人が皆忙しそうで声をかけられない」、これは新入社員の側からよく出てくる言葉です。何も聞いてこないからといって、順調なわけでも、聞いてこないのは本人が悪いわけでもありません。指導担当者が、知らず知らずのうちに聞きにくい状況を醸し出している可能性も忘れてはいけません。
5. 質問が減ってきたのは、好ましいことばかりではない
新入社員にとって組織は未知の世界です。疑問や質問が自然と湧いてきますし、時には新人なりに考えたやり方や提案をぶつけてくることもあるでしょう。「それは分かるけど、前例がないんだよね」、「すぐに対応できるのはベストだけれど、うちは組織自体が大きいからねー」、「こういう細かいことは、いちいち考えずに言われたとおりやりなさい」、こういう対応が続けば、「何を言っても無駄だ」と感じて、何も聞かなくなってくるのは自明の理です。
新入社員の素朴な疑問は、長年組織にいる私たちに新しい視点を与えてくれるものです。せっかくの見直しのチャンスと、新入社員のモチベーションを削がないようにしたいものです。
いかがでしたか?
新入社員を育てることは、確かに手間と時間のかかるものです。「人を育てるのは自分育て」という言葉が表わしているように、忍耐力がつくのはいうに及ばず、仕事や人生についての見直しから部下育成のノウハウまで、指導する私たち自身も、いろいろなことを学んでいます。ぜひこの機会に、自分自身が仕事とどう向き合っているか、組織のなかでの役割や期待は何か、自分の強み、特徴などとも併せて振り返ってみましょう。
せっかく採用したにもかかわらず、1年足らずでやめてしまう人がいるという現状は今も昔も変わりません。企業側の採用にかかった費用や時間の損失の問題だけでなく、やめることになってしまった本人にとってもあまり喜ばしいこととはいえません。
縁あって入社、配属されてきた新入社員とともに、私たち自身もいっそう成長できるチャンスを掴んでいることを忘れないでいたいものです。