育成の実際
ここからは、配属された新入社員を「ティーチング+コーチング」の育成方法で育てる流れをみていきます。現場では、それぞれの企業の実情に応じて当てはめてください。
(1)あなたの指導する新人はどんな人か
この育成方法では、新入社員と指導担当者の間で効果的な対話がなされることが必要不可欠です。相手に合わせた育成のためにも、新人についてのデータベースを作りましょう。
(2)新人育成をデザインする
まず、図表4の問いに答えてください。答えを考えていくと、あなたなりの育成イメージができてくるはずです。そこから育成計画のたたき台を固め、どのような社会人、組織人に育ってほしいかビジョンを描いてみてください。
細かい育成計画については、あなただけでなく、上司や職場で共有することも必要ですし、実際の育成計画は、新人本人とゴール設定をします。
(3)学びの流れ、理解する過程を知っておく
新入社員の育成では「いま何が必要かを知る→どのように行動すればよいかを学ぶ→意識して行動する→行動習慣になる」という流れがあります。いまどの位置まで学べているかも確認しましょう。社会人の基本行動については、本人が「知っているつもり」になっていることもありますから、指導の際には進捗状況を把握しておく必要があります。
(4)仕事の教え方
仕事の手順は、主に「ティーチング=教える」で進めます。必要により見本を見せながら順を追って教えます。
ポイントは、どうやると新入社員が早く覚えるかを考えることです。実際に仕事をしてみて覚える人、教えられた内容を自分なりに納得して覚える人等さまざまです。くれぐれも「人の話は書かずに聞け」などといきなり押し付けることのないように。「どうも覚えが悪い」と感じたら、本人の声を聞いてみましょう。「これまで新しいことを覚える時はどうやると効率が良かった?」と質問のスキルを活用します。
また、同じことを二度は教えないと始めに伝えたり、マニュアル作成の課題等を出したりしておくとより理解も深まり、真剣さが違ってきます。
一度教えたら、まず自分でやらせます。分かったつもりで勝手に進めたり、大きな失敗につながるミスをしていたりしない限りは見守りましょう。人は失敗から多くのことを学べます。失敗をたくさんできるのは新人の特権ですから、あなたがそのチャンスを奪ってしまわないように気をつけます。声をかけるタイミングがポイントになります。先輩として仕事のコツを知っているはずです。間違えやすい場面は要チェックポイントになるでしょう。
一度やり方を説明した仕事について、途中で「分からない」と言ってきた場合は、本人の確認にもなりますので、質問のスキルを使って何が分かっていて、何が分かっていないかを説明させます。そのうえで必要なことを補っていきましょう。
(5)目標設定から計画、実践までを対話で進める方法
最後に、新入社員育成期間全体にわたる考え方と進め方をみておきましょう。その際に使える新入社員との対話例も紹介します。大きな流れは図表5のようになります。