識者・人材教育コンサルタントに聞く 人材育成のあり方と育成施策

回答者
氏名 植田 寿乃
所属 キュー
肩書き・役職 代表取締役/キャリアコンサルタント
専門分野 人材育成 

T 人材育成のあり方・スタンスについて

問1
社会や経営環境の変化に伴い、組織と個人の関係が変わりつつあるいま、企業における人材育成のあり方やスタンスの置き方にも、大きく2つの考え方が現れています。以下の3つのテーマについて、どのように考えていますか。2つの選択肢うち、あなたの考えにより近いものに〇をつけ、その理由や考え方についてご記入ください。
(1)
人材育成は「企業責任」か「個人責任」か――能力開発の主体・責任について
A 企業が責任をもって行うべきである
B 個人が自分の責任で行うべきである

【回答】

  1. Aに近い
  2. Bに近い
【その理由や考え方についてご記入ください】

今の時代は、企業は人を育て活かす時代である。自分が成長できるから、その会社で働く貢献する、というエンゲージメントの関係が一番重要。だからこそ、企業がもっと人材育成に情熱と時間をかけていくべき。

(2)
育成対象は「選抜重視」か「全体底上げ」か――育成対象者について
A 社員を選抜して育成するべきである
B 社員全体の底上げをはかるべきである

【回答】

  1. Aに近い
  2. Bに近い
【その理由や考え方についてご記入ください】

優秀な人だけで会社を動かせばいいという、エリート幻想を捨てるべき。優秀な人が35年同じ状況であるはずがない。すべての人の可能性が引き出されたときに、本当の企業の力が発揮される。

(3)
育成の施策は「短期重視」か「中長期重視」か――育成施策の考え方について A 変化に対応するため、なるべく短期的な成果を重視した育成施策を行うべきである
B 変化に関わらず、なるべく中長期的な成果を重視した育成施策を行うべきである

【回答】

  1. Aに近い
  2. Bに近い
【その理由や考え方についてご記入ください】

企業における人材育成は、子育てと同じ。業務に必要なスキルや知識を覚えさえることは訓練であって人材の育成とは意味が違う。年齢と役割、コミュニケーション、リーダーシップなど、気づきのきっかけを作りながら、中長期で成長を見守ることが重要。

U 人材開発部門が抱える問題点について

問2
日ごろの指導等を通じて感じる、企業の人材開発部門が抱えている問題点は何でしょうか。該当すると思われるものを3つまで選択して○をつけ、そのうち最も重要と思われる項目について、お考えやコメントをご記入ください。
  1. 経営トップとの意思疎通が弱い
  2. ミッション・役割が不明確
  3. 部門の重要性が社内に認識されていない
  4. 人事部門との連携が不十分
  5. 現場の教育ニーズ把握が不十分
  6. 事業展開が速く、必要とされる能力要件に教育施策が追いついていない
  7. 前例踏襲型の研修になっている
  8. 外部研修機関頼りになっている
  9. 研修効果の測定が不十分
  10. 教育予算不足
  11. 業務が多忙である
  12. 人材開発スタッフ同士の情報共有・意見交換が不十分
  13. 人事異動が頻繁でスタッフの知識・経験が深まらない
  14. スタッフが現場の実情を理解していない
  15. スタッフの能力開発が不十分
  16. スタッフとして適性のある人が配置されていない
  17. 人材開発部門のノウハウの伝承がうまくいっていない
  18. その他()
【その理由や考え方についてご記入ください】

経営陣、人材開発部門長、そしてスタッフが、どのような想いで繋がり行動しているかで、その会社の人材開発の状況は一目瞭然である。人材開発部門は組織の縮図であり、自らが学び、体現している姿勢がもっとも重要である。

V 効果的な育成施策について

問3
人材開発が抱える課題は多岐にわたっていますが、以下の古くて新しい4つのテーマについて、どのような育成施策が最もふさわしいとお考えですか。
(1)
ミドル・マネジャー(管理者)の育成施策
(2)
人材開発スタッフの育成施策
(3)
研修ニーズの把握の仕方
(4)
研修効果測定の考え方と方法

 各テーマごとに、重要・効果的だと考える育成施策や方法を選択肢からそれぞれ3つまで選択して〇をつけ、その理由や考え方、具体的な方法等についてご記入ください。

(1)ミドル・マネジャー(管理者)の育成施策について(3つまで選択)
  1. 管理職研修(Off-JT)
  2. 自己啓発支援
  3. 国内留学
  4. 海外留学
  5. 海外研修
  6. ジョブローテーション
  7. 子会社・関連会社への出向
  8. 目標による管理(MBO)
  9. 社内公募・FA制度
  10. 自己申告制度
  11. ヒューマンアセスメント
  12. プロジェクトへの参加
  13. アクションラーニング
  14. 社外セミナー・講座への参加
  15. eラーニング
  16. 異業種交流研修
  17. 管理職任用前研修
  18. 経営幹部との定期懇談
  19. その他()
【その理由や考え方、具体的な方法等についてご記入ください】

単なる役割としての認識ではなく、管理職としての人間力を高める研修が必須。自分と部下のモチベーションマネージメント、リーダーシップ、コミュニケーションなど、部下を育て活かすことができる管理職、部下から信頼させる管理職育成は、研修による気づきが絶対的に必要。業務から離れた合宿研修などで、自分を見つめなおすところから始めるべきだろう。

(2)人材開発スタッフの育成施策について(3つまで選択)
  1. 人材開発スタッフの能力要件の策定
  2. 人材開発スタッフの教育計画の作成
  3. OJT計画の作成・実施
  4. 外部研修機関のセミナー・講座受講
  5. 自己啓発への支援
  6. ジョブローテーション
  7. 人材開発部門への長期的な配置
  8. 資格取得の援助
  9. 異業種交流会への参加
  10. 目標による管理(MBO)
  11. 人材開発スタッフ同士での情報共有
  12. 現場との情報交換
  13. その他()
【その理由や考え方、具体的な方法等についてご記入ください】

人材開発部門の担当者は少なくともキャリアカウンセラーの資格を取得することを義務付ける必要がある。資格取得のための学習の過程で最低限の必須な知識を習得することができる。また自らがいろいろな研修を体験し、学ぶこと、他社との交流会、勉強会に参加して刺激を受けることが、自社の問題、課題への解決の糸口となる。これは継続的に行われていなければ意味がない。

(3)研修ニーズの把握の仕方について(3つまで選択)
  1. 経営戦略上の要請に基づく人材開発計画
  2. 経営トップからの情報収集
  3. 人事部門との情報交換
  4. 現場の管理者からの情報収集
  5. 社員からの情報収集
  6. 顧客からの情報収集
  7. 外部講師・外部研修団体等からの情報収集
  8. 研修後のアンケート調査
  9. 従業員満足度調査
  10. 人材開発委員会など特別機関の設置
  11. その他()
【その理由や考え方、具体的な方法等についてご記入ください】

人材開発は企業にとって生命線である。どのような研修がいま必要なのかは、経営陣、人事部、労働組合などいろいろな立場から意見交換がなされ、何をどのように行っていくかを会社として決めていくのががよい。各部署のセクショナリズムがじゃまをして、研修がうまくできない企業が多すぎる。

(4)研修効果測定の考え方と方法について(3つまで選択)
  1. 研修の観察による把握
  2. 研修後のアンケート
  3. インタビュー(受講者、上司、研修講師)
  4. 理解度テストの実施
  5. 成果発表会
  6. 効果測定のためのフォロー研修
  7. 独自測定ツールの開発
  8. 既存測定ツール・メソッドの活用(具体的に:)
  9. 外部機関への委託
  10. その他()
【その理由や考え方、具体的な方法等についてご記入ください】

研修直後のアンケート、1年後のレポート、フォロー研修など、単発で終わらせないことが重要である。これは研修効果の測定という意味合いとは別に、研修を受けた人たちが、それを継続的に意識することにも繋がる。

W 今後、求められる人材開発スタッフ像

問4
今後、求められる人材開発スタッフ像とはどのようなものでしょうか。取り組み姿勢、意識や能力などについて、お考えやアドバイスをご記入ください。

人材開発に携わるなら、プロフェッショナルになってほしい。自らが学び、体感したことのなかから、本当に自分たちの企業に必要なものを考え、提案し、実施するという流れ。できれば、社内講師も目指してほしいと思う。

X 企業の人材育成に関わるにあたって「大切にしていること」

問5
あなたが企業の人材育成に関わるにあたって「大切にしていること」は何でしょうか。

愛を込めて、全身全霊で研修を行うこと。自然体、笑顔。学び続けること、自分自身の心を磨き続けること

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