人事労務分野の情報機関である産労総合研究所(代表・平盛之)は、役員報酬の決め方や水準等について定期的に調査を行っており、このほど最新の調査結果がまとまりましたので、ご報告いたします。本調査は、2005年以降ほぼ2年おきに行っているもので、今回が6回目となります。
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主なポイント
役員の年間報酬額は、平均で会長3,693万円、社長3,476万円、専務2,433万円となり、集計対象企業の異同もあり、厳密な比較はできないものの、2013年の前回調査と比較すると、概ね増加傾向が認められた。
(1)役位別にみた年間報酬の水準と役員賞与の支給状況
- 役員の年間報酬額は、会長3,693万円、社長3,476万円、専務2,433万円
- 役員賞与を支給する企業は46.5%。支給方法は「利益配分」が40.3%で最も多く,「利益連動給与」が31.9%,「事前確定届出給与」が20.8%
(2)役員の定年制と退職慰労金制度の有無
- 35.8%の企業に,社長にも「定年制あり」。平均定年年齢は67.3歳
- 役員の退職慰労金制度がある企業は,大企業では3割だが,小企業では7割
(3)役員退任後の処遇
- 役員退任後の処遇は,「ルールはなく,人によって異なる」が48.4%,「常勤の顧問」あるいは「非常勤の顧問」が,ともに21.9%
(4)国内出張における取扱い
- 社長の新幹線グリーン車利用を認める企業は67.1%,航空機の高級シートは56.8%
調査要領
【調査名】 「2015年 役員報酬の実態に関する調査」
【調査対象】上場企業1,500社と未上場企業から任意に抽出した1,000社の計2,500社
【調査時期】2015年9~11月
【調査方法】郵送によるアンケート調査方式
【集計対象】締切日までに回答のあった155社
調査結果の概要
[1]役位別にみた年間報酬の水準と役員賞与の支給状況
(1)役位別にみた役員報酬額
役位別の平均年間報酬額をまとめたものが表1である。会長3,693万円(前回3,019万円)、社長3,476万円(同3,430万円)、専務2,433万円(2,214万円)、常務取締役1,885万円(同1,809万円)、取締役(役付以外)1,556万円(同1,604万円)となり、集計対象企業の異同もあり、厳密な比較はできないものの、2013年の前回調査と比較すると、概ね増加傾向が認められた。
最も関心の高い「社長」の年間報酬について、賞与の有無別にみると、〈賞与あり〉の場合は、4,141万円、〈賞与なし〉の場合は3,004万円となっている。
表1 役位別にみた年間報酬額
(2)役員賞与の支給状況と支給方法
役員賞与の支給状況については,「支給している」企業は46.5%で,前回調査の40.3%より増加している。
役員賞与の支給方法としては,「利益配分として支給」が40.3%(前回44.8%)と最も多く,次いで「利益連動給与として支給」31.9%(同15.5%),「事前確定届出給与として支給」20.8%(25.9%)という結果だった(図1)。
図1 役員賞与の支給状況と支給方法
[2]役員の定年制と退職慰労金制度の有無
(1)役員の定年制の有無と定年年齢
役位別に定年制のある企業の割合をみると,会長32.8%(前回27.2%),社長35.8%(同36.2%),副社長44.4%(同42.7%),専務取締役54.8%(同54.2%),常務取締役58.2%(同58.3%),取締役(役付以外)56.9%(同61.2%)で,社長と取締役(役付以外)を除いて前回調査よりも増加する傾向がみられる。平均定年年齢は,会長69.7歳,社長67.3歳,副社長66.1歳,専務取締役65.4歳,常務取締役64.5歳,取締役63.3歳である(図2)。
ちなみに,社長の定年年齢の分布をみると,70歳が37.7%と最も多く,次いで65歳が11.3%,66-69歳が22.6%など,66歳以上で全体の64%を占めている(図3)。
図2 定年制の有無と平均定年年齢
図3 社長の定年年齢の分布(定年制あり=100)
(2)役員の退職慰労金制度の有無
退職慰労金制度のある企業は60.0%で前々回(2010年)の64.2%,前回の63.9%に引き続き減少傾向を示している。「過去にあったが廃止した」は30.3%,「もともとない」は9.0%である。退職慰労金制度は企業規模による違いが大きく,大企業(1,000人以上)では退職慰労金のある企業は34.5%であるのに対して,小企業(299人以下)は74.4%と高い割合を保っている(表2)。
表2 役員の退職慰労金制度の有無と今後の方向性
[3]役員退任後の処遇
役員退任後の対応をみると,「ルールはなく,人によって異なる」48.4%(前回52.1%)が最も多く,ケースバイケースで対応している企業が,今回も半数近くを占めている。一方,「とくに処遇しない(そのまま退任)」という企業も20.6%(同19.4%)と2割あり,これらの傾向は変わらない。
何らかの処遇を行う場合の対応としては,「常勤の顧問・相談役等になる」と「非常勤の顧問・相談役等になる」がともに21.9%,「グループ会社の役員となる」(5.2%)や,「再度,社員として雇用する」(1.3%)はわずかであった(複数回答)(表3)。
表3 役員退任後に関する取扱い(複数回答)
[4]国内出張における取扱い
役員のフレンジ・ベネフィットの一つとして,今回の調査では国内出張旅費の取扱いを取り上げて調査した。
国内出張において,新幹線のグリーン車や,航空機に設けられている,いわゆる高級シートの利用を認めるかどうかも実務上のポイントとなる。
新幹線のグリーン車利用を認める企業の割合をみると,社長が67.1%(「認める」59.4%+「条件付きで認める」7.7%),取締役が49.1%(同36.8%+12.3%)。これに対して一般社員は8.4%(同1.3%+7.1%)である。さすがに社長については,7割近い企業がグリーン車利用を認めている。
次に航空機の高級シート利用を認める企業の割合をみると,社長56.8%(「認める」45.8%+「条件付きで認める」11.0%),取締役36.8%(同19.4%+17.4%),一般社員7.7%(「条件付きで認める」のみ)であった(図4)。
図4 国内出張におけるグリーン車等の取扱い
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※詳細データは「賃金事情」2016年1月5・20日号に掲載しています。
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株式会社産労総合研究所 「賃金事情」編集部 担当:伊関,境野,黒田
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